■ハンセン病と人権 ~みんなでつくる共生社会を目指して~
生涯学習課 社会教育指導員 井上 安則
◇悲運の姫 今もまつられる鴫山姫塚
三瓶町鴫山地区には、悲運のお姫様が今もなお大切にまつられている塚があります。旧双岩村誌によると、次のような言い伝えがあります。(鴫山地区は、旧双岩村)
昔、京都にある公卿のお姫様がらい病(ハンセン病)にかかられたので、舟に乗せられて流されてしまわれました。やがて船は、八幡浜市川上町白石の浜に流れ着きます。その後、裏山の尾根伝いに鴫山にたどり着きました。鴫山の人たちはこの姫に同情して小屋を建て、村養いにしたのです。この村に永久にらい病の人が出ないよう、お姫様は毎日法華経を石に写されました。姫の没後、当時の村人たちは、その石でお姫様の塚を造り、おこもりをしてお姫様をまつりました。
さて、ハンセン病とは、どのようなものでしょうか?
◇ハンセン病とは?
ハンセン病とは、らい菌による感染症で、この病気にかかると、神経が麻痺し、感覚がなくなる、体の一部が変形してしまうといった症状が現れます。感染力は非常に弱く、発病は極めてまれですが、かつては原因がわからないため、不治の病や遺伝する病気と考えられたり、恐ろしい病気と思われてきたりしました。しかし、治療薬が広く使用されるようになった昭和24年頃以降は、治療薬で治る病気になりました。
しかし、わが国ではその後も隔離政策がとり続けられ、平成8年(1996年)の「らい予防法」が廃止されるまで続きました。
家族と一緒に暮らせない。本名を名乗ることができない。療養所に閉じ込められ、結婚しても子どもを持つことができない…隔離政策によって、ハンセン病患者・元患者の方々は、このような生活を長い間強いられてきました。以前からの誤った知識により、ハンセン病患者、元患者やその家族に対する偏見や差別は、今も続いています。
鴫山地区の方たちの姫を思う心、差別をしないという考え方は、数百年経った今でも、お姫様まつりとして大切に受け継がれています。さまざまな人権問題について、正しい理解をし、誰もが生きやすい共生社会をみんなでつくっていきましょう。
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