■活躍の場がひろがるきっかけに
奥山 優
1999年生まれ。自閉症で最重度の知的障がいがある。
民間企業とアート雇用契約を結び、絵の商品化など多方面で活躍し、マスコミにも多数取り上げられている。独特な色遣いで、カラフルandキュートな作風が人気。
こまきアール・ブリュット展で小牧市長賞を受賞したことがきっかけで、画家としての道を歩き始めた奥山優さん。今回は、母の美紀世さんにお話を伺いました。
◇いつ頃から絵を描きはじめた?
優は生まれつき重度の知的障がいと自閉症があり、じっとしていることが苦手な子でした。小学校に入学したときに周りに迷惑をかけず、自席でおとなしくしていられるようにと絵を教えたのが最初です。
成長していくにつれて絵を描くことがどんどん好きになりました。動物が大好きで、動物の絵ばかり描いていました。
そのころから夢は画家になること。小学校の卒業文集に「絵かきさんになりたい」と書いていました。
◇小牧市長賞を受賞した影響は?
優の父親は4年前にガンで他界しましたが、病院のベッドで「優の絵を世の中に出してほしい」と言い残して亡くなりました。そんな父親の遺志や、優が絵を描く楽しさをさらに伸ばせればと思い、出展しました。そこで入選したことをきっかけに他の作品展にも出展したり、民間企業からの依頼を受けたり、声をかけていただきアート雇用していただきました。「こんな絵を描いてほしい」と注文をいただくなど、あっと言う間に活躍の場が広がっていきました。以前は優が感じたことを自由に描いていましたが、今ではそれに加えて依頼を受けたり、展覧会に出展することが増えました。
◇今後の活動は?
活躍の場が広がっても優自身はまったく変わっていません。今後も基本的に「優が楽しく絵を描くこと」が大前提です。そのうえで多方面でさまざまな活動を行うことができているのはとてもありがたいことです。今後も続けていければと思います。
また、一般の作品展にも出展していきたいです。アートに障がいは関係ありませんからね。今後も二人三脚で活動を行えればと思います。
◇市民の皆さんにメッセージを
障がいを持っている人でも、生きがい、やりがいを持つことで、社会で活躍できる可能性を秘めています。優をきっかけに知的障がい者アートの事がもっと社会に広がってほしいです。
◇奥山 優 オンライン個展
11/27(月)~12/1(金)に小牧市役所展示スペースで開催した「奥山優個展~ファンタスティックアニマルズ~」に出展された作品を「オンライン個展」として市ホームページで公開します。
日時:12/2(土)~12/24(日)
※本紙またはPDF版に掲載の二次元コードをご確認ください。
■芸術を通した社会参加を目指して
~社会とつながるきっかけを~
障がいのある方を支援している施設は市内に数多くあります。その中で、社会福祉法人あいち清光会が運営する「障害者支援施設サンフレンド」では、芸術で活躍するための支援に力を入れており、また、あいち清光会は「こまきアール・ブリュット展」の企画運営も行っています。
今回はあいち清光会理事長の川崎純夫さんにインタビューしました。
◇サンフレンドとは?
主に知的障がい者や自閉症の方が利用しており、創作活動や生産活動、手芸などによる就労の機会などを提供しています。「一人ひとりの豊かな生活を目指して…」の基本理念を基に、障がいがある人の権利を守りつつ、安全安心な地域生活が送れるように努めています。
◇創作活動に力を入れているのはなぜ?
法人の設立発起人である私の父は昭和30年代に特殊学級で美術の教員をしていました。
当時は障がいがある人の就職が困難で、社会との繋がりができない人が多く、父は心を痛めていました。「障がいがある人の能力を伸ばしたい、可能性を広げたい」という想いから法人を設立しました。その父の想いを私たちが引継ぎ、今日に至っています。
いろいろな人たちと接していて感じるのは、創作活動の経験がない、経験するきっかけがない、という人たちが多いです。そのような人に絵を描くことや物を創ることを教えると、やっていくうちに楽しくなり好きになることで、どんどん才能が伸びます。純粋で発想が豊かなので型にとらわれない表現をすることがあります。
◇どのような社会参加につながっている?
作品展への出展をきっかけに、その作品が民間企業の目にとまり、アート活動を仕事とした就職(アート雇用)に繋がっている人が複数います。もちろん全員が雇用されるわけではありませんが、創作活動や作品展を通じて社会から認められる実感をし、生きがい、やりがいに繋がっていると思います。
◇今後はどのような活動を?
今年から書道の指導を始めました。また、利用者からは「もっと陶芸をしたい」との声が届いています。
これからも本人、ご家族の意見を取り入れながら、活動していき、社会参加の場を広げていきたいと思います。
■だれもが暮らしやすく、豊かに生きることができる社会へ
本市では、だれもが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の実現に向け、障がいのある方の自立と社会参加の支援などのための施策をさらに推進し、「支え合い、ともに暮らせるまち」を目指しています。
学ぶ、働く、遊ぶなど、あらゆる分野に参加する機会は障がいの有無に関わらず、誰にも平等に保障されなければなりません。そのためには、社会全体に障がいと障がいのある方への理解が広まることが必要です。
文化・芸術活動は、障がいのある方の生活にうるおいを与え、仲間づくり、自己表現の場や社会参加につながるとともに、市民の方々がその作品に触れることは障がいのある方への理解につながります。
今後も文化・芸術活動への支援を通じて、障がいのある方が夢を持ち、その社会参加を促進するとともに、広く障がいに対する理解を深め、障がいの有無に関わらず、だれもが暮らしやすく、豊かに生きることができる社会やまちづくりへと繋がる社会を目指していきます。
■皆で手を取り合って
障がい福祉課長 浅野 秀和
「こまきアール・ブリュット展」は障がいのある方の文化・芸術活動の発表の機会や社会参加の場の提供、市民の障がい者に関する正しい理解を深めていただくことを目指して令和元年にスタートしました。
毎年多くの方が出展し、その作品のレベルは年々向上しています。障がいのある方の自由な表現は、私たちに新鮮な驚きと感動を与えてくれます。
また、周囲の方々の理解や支援を受けながら創作活動にやりがいを持つ方、アート雇用など活躍の場を広げている方がいるということについてはとても嬉しく感じています。
障がいのある方やそのご家族、企業、地域住民などが手を取り合って障がいの有無に関係ない共生社会を目指しましょう。
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