自然災害は予測不可能で、いつ襲ってくるか分かりません。そんなとき、重要になってくる3つの要素が自助(自分の身は自分で守る)、共助(地域住民同士の助け合い)、公助(行政による支援)、であり、この3つが調和して初めて、真の防災力が生まれます。
中でも今回注目するのは「共助」の力。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災以降共助の重要性が強く認識されました。行政の初動対応には限界があり、多くの被災者が近隣住民による救助で助かりました。地域の協力関係は、災害時に驚くほどの威力を発揮します。
震災後、地域コミュニティによる自主防災組織の設立が進み、災害に備えた取り組みが広がりました。今回は、そんな自主防災組織として「共助」に力を入れている前ケ須区自主防災会と会長の加藤幹夫さんを紹介します。
▽プロフィール
加藤 幹夫さん(73)
役職:前ケ須西区長・防災会会長
防災歴:20年程度(会社業務含む)
資格:防災士・乙種第4類危険物取扱主任・キャンプディレクター2級など
[力を入れている防災分野]
共助展開のための要員確保、緊急備品確保 など
◇現在、地域での災害対策は不十分
子どもの頃、伊勢湾台風を経験し、弥富町職員だった父親の災害復旧対応をする姿を見た記憶から、子どもながらに感じた悲惨さを「伊勢湾台風級の災害には人海戦術をとらないと災害復旧、避難所運営、避難者支援はできないと感じました。阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震をみても、広域災害であるほど、発災時から公助が入るまでに時間がかかります。その間、家族や親族など大切な人を守るのに個の力では限界があり、生活を維持するにも相当な負担がかかります。」と話し、続けて「最近はご近所、地域コミュニティが軽視されつつあります。災害が多い日本、いつか自分の身にかかる災害を想定しておかなければ悲惨な事態を招くことになってしまうかもしれません。自助で助かった命を共助でつなぐことが大切です。」と共助の重要性を訴えられました。
◇地域防災の課題とこれから
「皆さん、防災は必要とは考えているが、不便な生活を知りません。スイッチを入れれば電気が使える。蛇口を捻れば水が出る。電子レンジ3分でご飯が食べられる。発災すればこんな当たり前が当たり前でなくなり、今日と明日では全く違った世界になることを自覚する必要があります。」と一人一人の防災意識の重要性と「自主防災会だけではなく、町内ごとでも出前講座などを活用して防災知識向上を図るとともに、市内全域合同の自主防災会総合防災訓練を実施して各コミュニティの繋がりを強化できるといい。」とこれからの目標を語られました。
■前ケ須区 自主防災会 活動紹介
◆学んで、備えて、つながって、防災訓練
前ケ須自主防災会では、年2回の防災訓練を実施しています。主な訓練内容は、(1)避難所受付・情報訓練、(2)防災資料の掲示・説明、(3)防災資機材の展示・説明・取り扱い実技、(4)防災ビデオ鑑賞、(5)炊き出し訓練です。
資機材の取り扱い実技では、ボートやトイレ、浄水機などを実際に手動で組み立てるなど、実演を行っています。炊き出し訓練では、実際に被災時に食べる非常食を試食します。湯煎した缶飯や、お湯を入れて待つだけでそのまま食べられるようになるおにぎりを訓練参加者と一緒に食べます。実際に食べてみると、「意外とおいしい」ものなどをさまざまな種類を取り揃えています。
また、消防団員による小型ポンプ操法の実演など、消防団への勧誘活動も行っています。防災訓練では、参加記念品として災害時にも使える電池式の手持ち扇風機を配布するなど、参加者を増やし、少しでも防災意識の向上につなげるためにいろいろな工夫をしています。
◆今日の備え、明日の命綱
◇発電機
カセットボンベ(左)とガソリンで動かすことができる発電機(右)です。災害時には電気をつくり、非常灯をつけたり、スマホの充電を行うことが可能です。
◇緊急時用浄水装置
一次浄水(左)を1時間当たり2,000リットル、2次浄水(右)を1時間当たり52リットル供給することができます。
・一次浄水…生活水
・二次浄水…飲料水
◇移動炊飯器Z型
LPガス(プロパンガス)と薪の両方で使用可能です。1度の調理で米だと220膳分、汁物だと300人分調理が可能です。
◇レディースキット
通常の避難者対応物品にプラスして、自主防災会女性会員からのアイデアを採用して、女性があると嬉しいものをキットにしました。
※写真は本紙5ページをご覧下さい
■市では、地域の自主防災組織での活動を応援しています
▽自主防災組織
自主防災組織について、詳しく紹介しています。結成方法や補助金についても説明しています。
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▽まちづくり出前講座
市の職員が講師になって出向き、防災に関する市の取組について説明を行います。
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▽弥富市消防団
消防団は、地域における消防・防災の担い手として活動しています。市内在住、在勤の方の入団をお待ちしています。
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※二次元コードは本紙5ページをご覧下さい
次ページでは地域でマネジメントする避難所開設と避難所運営について紹介していきます!
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