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《特集》アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)(2)

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愛知県春日井市

■「無意識の思い込み」がもたらす影響
アンコンシャス・バイアスは誰にでも生じてしまいますが、その思い込みによって、実際に実力や評価が変わってしまうことが分かっています。こうした影響は人々の挑戦する機会を奪い、自分らしいキャリア形成の大きな障壁となってしまいます。
今回は、実際に行われた実験を名古屋工業大学准教授の加野先生に紹介していただきます。

・名古屋工業大学准教授 加野泉先生
博士(学術)。専門は社会学。
ダイバーシティ教育、研究に従事する傍ら、産学連携で中部地域の女性活躍を推進する「名古屋工業大学女性技術者リーダー養成塾」および女性工学人材の裾野拡大事業の企画運営を担う。
ジェンダー・ダイバーシティに関わる社会、教育的課題に関する執筆・講演も行う。

◇実験1 女性は数学が苦手?
[内容]
数学の能力テストの実験で、数学が得意ではない大学生の男女67人をA・Bの2つのグループに分け、能力の範囲内で難しい数学のテストを受験してもらいます。テスト開始前、各グループに次のような対応をします。
A:「このテストで過去に男女差は見られていない」と告げる
B:男女差について何も告げない

≪先生の解説≫
被験者の数学能力レベルは同程度であるにも関わらず、Bでは男女の平均得点に大きな差が出ました。一方、「男女差はない」と説明を受けたAでは、平均得点の男女差がほとんど見られません。テストの前に「女性は数学が苦手」という固定観念が否定されたことが、A の被験者のパフォーマンスに影響しました。
実力発揮に向けて、もうひと頑張り必要な時、アンコンシャス・バイアスが邪魔をすることがあります。しかし、固定観念を否定する情報に触れることで、バイアスの悪影響を軽減できることを示した例です。

◇実験2 仕事の評価に先入観?
[内容]
男女のペアが投資に役立つ資料を作成し、高い成果をあげました。そこで、被験者60人をA・Bの2つのグループに分け、個人の貢献度を1点から 9点で評価してもらいます。その際、参考に業績評価の情報を提示しますが、各グループに次のような示し方をします。
A:個人の業績評価として示す
B:ペアの業績評価として示す

≪先生の解説≫
この実験では、被験者は、同じ内容の業績評価の情報を参照して、成果に対する個人の貢献度を評価しています。ただし、Aには「個人の評価」として、Bには「ペアの評価」として情報が示されました。
結果として、Aは男性と女性をほぼ同等に評価しましたが、ペアとしての情報を得たBは、女性の貢献度を低く見積もりました。
複雑な数値を扱い、勝機の見通しを立てる業務は男性が主導するものだ、というアンコンシャス・バイアスが評価に影響した例です。

■思い込みにとらわれず、自分らしく生きるために
アンコンシャス・バイアスを完全に無くすことはできません。大切なのは、自分の判断が思い込みではないかと疑い、気付くことです。
過去の経験や知識が全てだと思わず、「自分とは異なる受け取り方をするかもしれない」「10人が良いと思っても、11人目の人は不快に思うかもしれない」と意識することが大切です。
アンコンシャス・バイアスの存在を知り、誰もがそれぞれに思い込みを持っているということを前提にコミュニケーションや行動をとることで、一人一人が異なる存在として、互いの個性を尊重し合うことができます。
思い込みにとらわれず、それぞれが自分らしい道を歩めるよう、まずは気付くことから始めてみませんか。

◇point1 自分の思い込みに気付く
「これって私のアンコンシャス・バイアスかな?」と自分に問いながら、自分の考えを振り返ってみましょう。今まで気付かなかった自分の思い込みが見えてくるかもしれません。

◇point2 決めつけない、押しつけない
「普通はこうだろう」「この方が良いはず」と決めつけてしまう前に一度立ち止まり、相手を尊重する姿勢を心掛けてみましょう。

◇point3 相手の変化に注目する
自分の言動で相手が違和感を持っていそうだと感じたら、その気持ちを素直に伝え、相手の気持ちを聞いてみましょう。相手としっかり向き合うことが大切です。

■バイアスにとらわれず、自分らしさを大切にしている学生にお話を伺いました!
バイアスを『行動力』に。自分の道を歩み続ける。

名古屋工業大学大学院 工学研究科工学専攻 2年
大久保芽依さん

私は、現在大学院で建築について学んでいます。小学3年生の頃、建築現場で働いていた祖父と叔父の影響で、「家族の中で設計士がいないなら私がなろう!」と思ったことが、建築の道に進んだきっかけです。
建築を学ぶ中でバイアスを感じることもありました。機械を扱う授業では、「女性は危険だから見学しておいて」と言われ、何でも経験したい私はとても残念に思ったことを覚えています。また、工業高校出身で人よりも早く建築を学んでいた私は、「建築を知っていて当然」と言われることもあり、自分にとってかなりの負担となっていました。それでも、建築に携わっている自分が好きなので、「それなら建築を突き詰めよう!」という強い気持ちで勉強や制作に励みました。今ではその熱意から、保育園の設計図を市役所に直接売り込んだり、地域の方の家に飛び込みで取材をしたりと、バイアスを『行動力』という自分のメリットに変えることができています。
この行動力は、母の存在も強く影響していると思います。母は私自身の個性を大切にして育ててくれました。小学生の頃に「みんなと違う道を歩いてほしい。20〜30年後には絶対に個性が大事になってくるから」と言われたことが今でも心に残っています。
これまでの道のりで、建築が嫌いになりかけたこともありましたが、建築を通して多くの方に出会い、自分自身成長することができました。今は建築に興味を持ったことが、神様からもらったプレゼントだと思っています。これまで出会ってきた方々のお陰で今の自分がいると思っているので、「頑張ってほしい」「活躍してほしい」と言ってくれる方のためにも、建築を通して誰かの背中を押せるようなものづくりをしていきたいです。

問合せ:多様性社会推進課
【電話】85-4401

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