市民病院 院長
川井 覚
■延命治療とは?
最近、「もしもの時は延命治療をしないでほしい」と希望される患者さんが多くなった気がします。
病気が見つかり、これから治療に取り組んで一緒に頑張りましょうという時にこの言葉を聞くと、患者さんが将来に対していかに不安に思われているかがわかります。もちろん見つかった病気の状態が深刻なときは、将来のことを予測し自分の希望を伝えておくことはとても大切なことです。
さて、「延命治療」とはどういったことを指すのでしょう?延命治療とは、病気や怪我などによって回復の見込みがなく、死期が近い患者に対して、生命維持や余命の延長を主な目的として行われる医療行為のことを指します。
延命治療には大きく分けて、呼吸を助ける治療、栄養を補給する治療、全身管理のための治療などがあります。呼吸を助ける代表的な治療としては、人工呼吸器があります。気管切開などを行い、人工呼吸器を使って呼吸を助けます。栄養補給については、口から食べられない場合に鼻から管を通す経鼻栄養や、胃に直接穴を開ける“胃ろう”によって栄養を摂取します。その他、心臓マッサージや薬物投与による心肺蘇生、透析療法なども延命治療に含まれます。
延命治療といっても色々な治療があり、抗生剤の服用や点滴による治療は望むが、人工呼吸器につながないでほしい、“胃ろう”はしてほしくないなど人それぞれ思いは違います。
多くの方が苦痛を感じないようにしてほしいという思いがあるようで、わたしたち医療者は、患者さんの希望に耳をかたむけ、苦痛をできるだけ和らげ、残された時間をその人らしく過ごせるようQOL(生活の質)の維持・向上にも配慮することに全力を尽くしています。
私たちみんなが、元気な時からもしもの時のために、将来の心づもりをしてご家族と話し合っておくことが大切だと思いますし、できれば自分が意思決定を出来なくなったときに備えて書面に残しておくといいと思います。
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