八木歯科クリニックの八木一江先生に伺いました
1.はじめに
口腔機能は幼少期から獲得・発達→成人期で維持・向上→高齢期で機能低下と変化していきますが、いずれの年代においても発音、そしゃく、嚥下(えんげ)、呼吸、表情を作るなど重要な役割があります。
今回は「舌と口唇」に注目して見ていきましょう。
2.歯並びを保つためには舌と口唇が重要
現代では歯列が保たれるには、「正しく舌・口唇の位置を保ち、習慣になっている悪い癖を取り除く」という考えが主流になってきています。皆さんは安静時、口唇は閉じていますか。鼻呼吸できていますか。舌の位置はどこですか。
[安静時の正しい舌と口唇の位置]
舌の前方・側方・後方すべてが上顎口蓋(じょうがくこうがい)にぴったりついて、口唇をきちんと閉じ、鼻呼吸できていることが理想的な状態です。
それに対して、口呼吸している場合、舌は下方にいき、気道は狭くなります。唾液も乾いて、口臭や虫歯・歯周病の原因になり、酸素の取り込みも20パーセント減ってしまいます。
いわゆる「お口ポカン」では、口蓋に舌は触れず、頭蓋顔面(とうがいがんめん)の発育に悪影響を及ぼし、異常嚥下・歯列不正・悪い姿勢となる場合があります。原因が鼻づまりの場合は耳鼻科を受診し、しっかり治しましょう。口腔機能低下症や短い舌小帯(ぜっしょうたい)、また口唇が閉じにくい場合もあるので、歯科医院で相談してみてください。
3.高齢期はオーラルフレイル(口に関する“ささいな衰え”)に注意
舌は筋肉の集まりで、高齢期になり筋力が低下してくると、舌を口蓋に触れさせることが難しくなってきます。早期発見のために「舌圧(ぜつあつ)」や「オーラルディアドコキネシス」(5秒間パ・タ・カを速く何回言えるか)を測ってみましょう。気になる人はかかりつけ歯科医院で相談してみてください。
4.舌のセルフチェック
「あっかんべー」で思いっきり舌を前に出して自分の舌を観察してみましょう。
(1)舌の表面:唾液がしっかり出ていれば表面は濡れて潤っています。逆に乾いていれば口腔乾燥のサインです。水分を1日1.5リットルしっかり摂りましょう。また、保湿ジェルやスプレーも有効です。
(2)舌の色:表面が白くなっていたら舌苔(ぜったい)を舌ブラシで掃除しましょう。
(3)舌側面などの形状:潰瘍(かいよう)がないか、しこりがないか、気になる場合は歯科医院を受診しましょう。側面に波状の圧痕(あっこん)が付いていたら、上下の歯をかみ合わせてしまう「歯牙(しが)接触癖」の可能性があります。前述したように、舌を上顎口蓋全体につけて、口唇を閉じ、鼻呼吸をし、上下歯列の歯は離した状態を保つよう習慣づけていきましょう。
問い合わせ:健康福祉課健康増進係
【電話】0256-72-8380
<この記事についてアンケートにご協力ください。>