◆「機械は機械なの」
近年はAI技術の向上などにより、人間を介さず、コンピューターで音声化する機械読み上げが発達してきています。
スマートフォンを使いこなし、音訳でパソコン雑誌からも情報を仕入れるデジタル派の内藤さんは、「正確だし、スピードも自在に変えられるし、何度だって繰り返せるし、それはそれは便利」と機械読み上げの高性能化を歓迎しています。
「でも正確で便利っていうそれだけで、機械は機械なのよね。時々つっかえることがあったとしても、週に1回しか都合がつかなくても、こうして人の声で朗読してもらうことの代わりにはならないんですよ」
内藤さんの率直な感想を聞き、原さんに安堵したような表情が浮かびます。
◆目指すのは“伝わる音”
「広報えどがわ」などの定期刊行物や利用者から依頼された書籍などを朗読した音源は、目次を元に聞きたいページや見出しから再生できるよう編集されます。このようなデータは「デイジー図書」と呼ばれ、CDなどの形で利用者の元に届けられています。
デイジー図書への編集作業は、簡易なものであれば音訳団体が自前で行うこともありますが、広報誌のように多数の記事を短期間に処理しなければいけない媒体や、章立てが複雑な資料については、編集技術を持つメンバーがそろうボランティア団体「デイジー江戸川」の出番となります。
代表を務める妹尾せつ子(せおせつこ)さんは、まだテープ録音しかない平成元年から音訳ボランティアに取り組み始めたベテラン音訳者でもあります。その後、パソコンが普及し、個人でもデイジー編集を行える環境が整ってきた平成11年に、区内ボランティアの力で音訳からデイジー編集までを完結できる体制を目指した「デイジー江戸川」の立ち上げに参画。以来、四半世紀近くも音訳とデイジー編集の“二足のわらじ”を続けてきました。
編集の工程では、録音環境の違いによる音量などのばらつきを整え、適切な区切り位置を設定することで“いかにストレスなく聞ける仕立てとするか”が肝心になるといいます。
小学生の頃、全校朝会の列を抜け、裏方の放送当番として放送室に向かったことが“伝える”ことのやりがいに気づいた原体験という妹尾さん。
「音訳も編集も共通して目指すのは、なによりまず利用者の方が内容に集中できる音、伝わる音。放送当番の時と同じように、どちらも舞台裏の黒子の仕事だと思います」
こうした方々の情熱が、視覚障害者の方々に不可欠な「音訳」という情報の世界を支えています。
■デイジー録音図書製作講座
視覚障害者の読書環境向上のため、録音された音声データをパソコンで編集して、CDを作成するボランティアの養成講座です。
日時:2月19日(月曜日)・20日(火曜日) 10時30分~16時(全2回)
場所:グリーンパレス4階集会室403
対象:18歳以上で、自身のノートパソコン(Windows10以降)で作業とメール送受信ができる方
定員:15人(申込順)
申し込み:1月16日(火曜日)9時から電話(下記)で
問い合わせ:えどがわボランティアセンター
【電話】03-5662-7671
■ボランティア活動をやってみたい方
「自分もボランティア活動に参加してみたい!」という方はボランティアセンターにご相談ください。ホームページでは活動内容や活動地域からボランティアを募集している施設や団体を検索できます。
また、ボランティアの力を借りたい方の募集のお手伝いもしています。
【HP】https://edogawa-vc.jp/
問合せ:えどがわボランティアセンター
【電話】03-5662-7671
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