区内でも特に空き家が多い千住。「持ち主の高齢化」「家屋の老朽化」など、空き家に関する様々な問題を抱えています。そんな中、千住の空き家を活用し、まちの新たな魅力を生み出している方々がいます。※区の空き家問題の現状・対策事業などは、12面でくわしく紹介しています
■日本の文化芸術を伝え・楽しむ
路地裏寺子屋rojicoyaろじこや
千住旭町36の1
築90年の古民家を改装して活用。古民家ならではの雰囲気を活(い)かし、和文化体験や和楽器教室などを国内外の方に向けて開催。近年、敷居が高くなりつつある日本文化に気軽に触れ、学べる場となっている
代表:米本芳佳(よねもとよしか)さん
○元2軒長屋、不都合さも味
この物件は、私の活動を知ってくださっていた方にお借りしました。元々は2世帯の住宅が並んだ長屋だったのを1つの空間にしたそうです。変な位置にある柱も長屋時代の名残とのことで、あえてそのままに。「暮らしの中から文化が生まれる」という考えのもと、以前使われていたころの跡も大切に残しました。壁の修理には日本に昔からある素材を使っています。来た方に日本の技術についても伝えられたら、と思ってのことです。
○日本文化の魅力を国内外へ
私自身が母親であることや書道師範であることから、様々な方との出会いが重なり、まずは日本の子どもたちに日本文化を届ける事業をはじめました。現在は、インバウンド需要にも着目し、体験を通して日本文化の魅力と価値を多くの方に届けています。また、インバウンド協議会(足立区インバウンド推進協議会ANABA JAPAN ADACHI(アナバジャパンアダチ))を設立し、地域と連携。協議会を通してできたコンテンツの情報を観光庁や旅行代理店に提供する活動も行っています。
○千住を世界に知られるまちに
空き家や古民家が抱える安全性などの問題は深刻ですが、壊せばその家の雰囲気や個性を再構築することはできません。壊す前に、活用できる術(すべ)はないか考えてみることも大切なことの1つでは、と思います。千住は新しいものもあり古いものも残るまちです。その魅力を活かし、日本文化を伝えるインバウンドの取り組みや観光庁との活動などを通して、千住を世界に知られるまちにするのが目標です!
■文化芸術を通じて「縁」が広がる
仲町の家
千住仲町29の1
築約100年の日本家屋をそのまま活用。平成30年から足立区・東京藝術大学・NPO法人音まち計画の3者連携による「音まち千住の縁」(アートを通じた新たな縁を生み出すことをめざす市民参加型のアートプロジェクト)が運営する文化サロンとして、人と人・人と文化をつなぐ拠点となっている
アートアクセスあだち音まち千住の縁事務局ディレクター:吉田武司(よしだたけし)さん
○千住の歴史をみてきた家屋
この家屋は元々、千住の南側を拓(ひら)いた石出掃部介吉胤(いしでかもんのすけよしたね)という方のご子孫が守ってこられました。関東大震災後、使われていた部材を再利用して建て替えたそう。この周辺は戦争で焼けてしまったと伝わっていますが、この家屋の西門のところで火が止まり戦災を免れました。先代からご子孫に「千住の歴史をみてきた家を守り、ものすごく手を入れるのではなくこの姿のまま活かして残してほしい」と託されたそうです。
○仲町の家の可能性を引き出す
仲町の家では、音まち主催のものだけでなく、この場所に魅力を感じた方がイベントを開催できる枠を用意しています。仲町の家のスタッフと一緒にイベントをつくるんです。年々利用件数も増え、今では、ほぼ毎月そういったイベントを開催しています。区外から来た方が仲町の家に魅力を感じてイベントを行うこともあります。様々なイベントが行われることで、仲町の家の活用方法の可能性をさらに引き出していきたいと考えています。
○「縁」をもっと広げていきたい
すでに100年の歴史がある家屋です。この家の雰囲気や美しい縁側の魅力が多くの人と出会わせてくれていると感じています。ここでつなげた縁を仲町の家だけに留(とど)めず、外のまちにも広げていきたいです。例えば、向かいの神社や近くにあるBUoY(ブイ)と一緒に、地域に開かれたアートイベントをやって、駅から離れたこの場所を盛り上げるとか。でもまずは、100年の歴史がきざまれた仲町の家の魅力をより多くの方に知っていただきたいので、気軽に遊びに来てほしいと思います。
問い合わせ先:広報係
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