■虎葺き屋根
市文化財保護指導員 三好ゆき江
茅葺(かやぶき)の民家は日本を代表する民家で日本の原風景でもありました。茅葺きは断熱、空調、吸・防音、防水効果、囲炉裏で燃やすことによる防虫効果もあるとされ、茅葺き民家では夏は涼しく冬は暖かく過ごせるとされます。茅葺きの茅は、ススキ、チガヤ、ヨシ(アシ)、スゲ、麦藁、稲藁など各地域で屋根材として用いられた、身近で大量に入手できる植物の総称です。
市には茅の他に杉皮という独特の屋根材がありました。杉皮は青梅林業の特産物であったため、入手は容易で虫がつきにくく、茅のみで葺く屋根よりも耐久性が増すとされました。そこで、茅を内側に置いてその上に杉皮を敷き、さらにその上に茅を並べるという葺き方が市内の山間部で多く行われました。茅と杉皮を交互に層状に葺くため、虎の縞模様に見えることから「虎葺(とらぶき)」と呼ばれます。しかし、虎葺きを含む茅葺き民家は、昭和30年代半ば頃から近代的な生活様式が求められ、モダンな住宅への建て替えが進み減少しています。
現在、釜の淵公園内の郷土博物館のそばに建つ「旧宮崎家住宅」(国指定重要文化財)は、北小曽木村(現在の成木8丁目)から移築された江戸時代の民家で、虎葺きの屋根を現在に伝える貴重な文化財です。屋根にも注目してご覧ください。
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