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自治医科大学附属病院 連携協働コラム(1)

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栃木県下野市

■健康的な食生活の促進と目標設定
~健康日本21(第三次)を踏まえて~
自治医科大学附属病院 管理栄養士 川畑奈緒

◇はじめに
厚生労働省は5月31日に、第5次国民健康づくり対策「健康日本21(第三次)」の推進における基本方針を発表しました。「健康日本21」の正式名称は「21世紀における国民健康づくり運動」です。国民が主体的に取り組めることを前提に、すべての国民が健康で明るく元気に生活できる社会を実現するため、壮年期死亡の減少や健康寿命の延伸、生活の質の向上を目的に厚生労働省により策定されている指針です。2000年3月に「第一次」の運用が始まり、2013年から「第二次」が開始されました。2024年4月からは「第三次」が開始される見込みです。今回は、「健康日本21(第三次)」のうち、「栄養・食生活」に関する項目を解説します。

◇栄養と食生活
「健康日本21(第三次)」の「生活習慣の改善」の項目には、「栄養と食生活」に関する以下の目標が設定されています。

(1)適正体重を維持している人々の増加(肥満、若年女性のやせ、低栄養傾向の高齢者の減少)
体重は、各ライフステージにおいて主要な生活習慣病や健康状態と関連しています。肥満はがん、循環器病、2型糖尿病などの生活習慣病と関連があることが知られています。さらに、若年女性のやせは骨量減少や低出生体重児出産のリスクと関連し、高齢者のやせは肥満よりも死亡率が高くなることも確認されています。適正体重は、BMI※1 が18.5以上25未満(65歳以上はBMIが20を超え25未満)の範囲に収まる体重を指します。自身のBMIを計算し、適正範囲に収まるような食事量を心がけましょう。
※1 BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

(2)児童(小学生)・生徒(中学生、高校生)における肥満傾向児の減少
子どもの肥満のほとんどは、食事やおやつの過剰摂取、食事バランスの悪さ、運動不足が主な原因です。食生活やライフスタイルの変化により、一時期子どもの肥満は急増しました。現在は、増加傾向は収まってきていますが、なおも1割を超える子どもが肥満です。肥満による生活習慣病は子どもでも発症し、動脈硬化は子どもの時から進行します。子どもの肥満は大人の肥満の基盤となることから、早期から改善することが重要です。子どもの肥満評価は、肥満度※2 という指標を用いて行われます。肥満度が20%以上を軽度肥満、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満としています。
※2 肥満度=〔実測体重(kg)-標準体重(kg)〕/標準体重(kg)×100(%)
標準体重は文部科学省の学校保健統計調査「肥満・痩身傾向児の算出方法について」を参照してください。
【URL】https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1411711_00006.htm

(3)バランスの良い食事を摂っている人々の増加
主食(ごはん、パン、めんなど)・主菜(肉、魚、卵、大豆など)・副菜(野菜、きのこ、海藻など)の組み合わせは、日本の食事パターンで、適切な栄養素摂取量と健康な栄養状態との関連が報告されています。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回摂ることは、それ未満の場合と比べて、栄養素摂取量(たんぱく質、脂肪エネルギー比、ミネラル、ビタミン)が適正となることが報告されています。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を摂ることは、栄養バランスを保ち、生活習慣病の予防や生活機能の維持・向上のために重要です。しかし、令和3年の意識調査では、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を実践している人はわずか37.7%に過ぎませんでした。したがって、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を意識して摂ることが非常に大切です。

(4)野菜摂取量の増加
野菜と果物の摂取量を増やすことで、循環器病の死亡率が低下することが明らかになっています。国内で心疾患(高血圧症を除く)が原因で亡くなっている人は2020年には20万5,518人で、これは全死亡者の15%にあたることから、わが国では心疾患の克服が課題と言えます。この点からも、野菜と果物の摂取を増やすことで心疾患による死亡のリスクを減少させるという報告は注目に値します。しかし、健康日本21(第二次)の野菜の目標摂取量は1日に350g以上とされていましたが、目標値に到達できませんでした。健康日本21(第三次)では、前回の目標値である1日350g以上の野菜摂取を継続することが推奨されています。野菜350gの目安は、生野菜なら両手にのせて3杯分、茹でた野菜なら片手にのせて3杯分です。緑黄色野菜と淡色野菜を組み合わせて摂ることがおすすめです。

(5)果物摂取量の改善
果物の摂取は、高血圧や肥満、2型糖尿病などの生活習慣病のリスクを軽減することが示唆されています。しかし、日本人の一般的な果物摂取量は増加していないのが実情です。さらに、日本人の総合的な死亡率に影響を及ぼす食事の要因として、過剰な食塩摂取や全粒穀物の不足に続いて、果物の摂取不足が報告されています。果物の摂取と高血圧、肥満、2型糖尿病の関連を調査した結果、日々の果物摂取が200gまで増えると、それに伴うリスクが低減することが報告されています。また、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患、脳卒中、全死亡のリスクについての別の調査でも、日々の果物摂取が約200gでリスクが低くなることが報告されました。したがって、1日に200g以上の果物を摂取することを目指しましょう。ただし、2型糖尿病などの疾患を抱える人に関しては、果物の過剰摂取が疾患管理に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

(6)食塩摂取量の減少
世界195か国を対象にした、非感染性疾患による死亡・障害調整生命年※3 への不健康な食事の影響を調査した研究報告では、全世界的には全粒穀類の摂取不足が最も大きな食事要因とされています。しかし、日本を含む東アジアの地域では、ナトリウムの過剰摂取が最も大きな食事要因とされています。別の研究では、食事による食塩の過剰摂取が成人の非感染性疾患と傷害による死亡に最も大きな影響を及ぼしていることが示されました。これらの問題を解決するには、減塩のための対策が一層強化されるべきです。世界保健機関(WHO)は、1日の食塩摂取量の目標を5g未満としています。さらに、多くの国のガイドラインを考慮すると、高血圧予防のためには1日あたり6g未満の食塩摂取が望ましいと考えられます。一方、「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、習慣的な摂取量を考慮して、成人男性は1日あたり7.5g未満、成人女性は6.5g未満と設定されています。これらを基に、20歳以上の男女における1日あたりの目標食塩摂取量は、第二次の健康日本21の目標値8gから1g少ない7g未満とされました。
※3 平均寿命に、健康ではない人の障害の程度や期間を加味して調整した生存年数

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