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人間国宝認定おめでとうございます

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沖縄県那覇市

国の重要無形文化財保持者に市在住のお二人が認定されました。伝統的な首里の織物の制作技法に精通し染織作家として活躍する祝嶺恭子さんと、伝統的な琉球古典音楽の技法を高度に体現した実演に加え理論的研究も評価された大湾清之さんです。
※無形文化財について詳しくは…「みんなの文化財図鑑(無形文化財編)」ウェブや図書館で読めます!

■「首里の織物」祝嶺 恭子さん
しゅくみね きょうこ
昭和12(1937)年生まれ。左は「祝嶺恭子作品集琉球の織りいろに魅せられて」。ドイツでの調査の成果は「ベルリン国立民族学博物館所蔵琉球・沖縄染織資料調査報告書(一般財団法人 沖縄美ら島財団)」に収められています。
※写真は本紙をご確認ください。

戦後、沖縄には何もかもなくなってしまったという危機感と、文化を絶やしてはいけないという機運があるなか、与那国、宮古、八重山、久米島と織りの産地を調査し、教書作りに携わりました。どんなことがあってもやらなくちゃという気持ちでした。というのも、柳宗悦の「琉球の人文」を読み、恩師である柳悦孝(よしたか)先生の指導を受ける中で、先生方の沖縄文化に対する強い思い入れや意気込みを目にしていたからです。私がやらなくちゃと使命感を植え付けられたみたい。先生方に会っていなければ、こんなに続いていないですね。

戦禍を免れた織物の存在を知り、ドイツに渡った時には、糸に対する認識や完成度がつまった現物が残っていました。知恵と工夫、技術も美意識も全て備えているのを目にして、参りましたね。ひとつひとつルーペで必死に素材と技術を観察し、経糸何本、横糸何本、打ち込みが1センチに何本、緑が何本、と詳細にうつしとって、記録を整理し誰もが織れるよう設計図にしました。(注※ドイツの公使館が琉球王国併合前に、首里や八重山諸島などで購入・収集した品々が、ベルリン民俗学博物館に所蔵されている)
昔の人の仕事はすごく勉強になるんです。伝統的なものをやらないのと聞かれると、人の真似はしたくない、自分の創作をしたいと反発した時もありました。でも古い手縞(てぃじま)に感動したんですね。手縞は、400年も前の沖縄の人が色彩学もなしに、仕事を通し学んだ色の使い方をしているわけです。オレンジとグリーンは反対色なので、反発しあうと普通組み合わせないんですが、昔の人はそれを使っておさまっている。「いるおーらすん(いろをけんかさせる)」という沖縄の言葉があるように、仕事を通して知恵や美意識を取得していた。また織り色というものも本当に不思議で魅力的です。経糸に赤、横糸に青を入れると桔梗色が出るんですが、私はずっと織り色を中心にした色の使い方をしています。
基礎なしに新しさへ向かっても、そういうものはすぐ無くなってしまう根無し草です。古いものを見て勉強し、自分の物として消化してほしい。何をするにも色々なものを勉強し習得してそれらが肥やしになるのだと思います。

ものに宿る魂ではないけれど、それらに引き寄せられ、これをやらないといけないよと、使命感みたいなものがふつふつと湧いてくる、そういう仕事が仕事を招いてきました。先生が亡くなっても、灯台守のように光を与えているんじゃないかという気持ちになりますね。

■「琉球古典音楽」大湾 清之さん
おおわん きよゆき
昭和21(1946)年生まれ。著作に「琉球古典音楽の表層ー様式と理論ー」など。〔出演予定〕1/13(土)国立劇場おきなわ20周年記念公演〔好きな場所〕若狭公園

三線の楽譜にはうたの旋律(メロディ)が書かれていないので、口伝で覚えます。人により実演に違いがあり、もともとはどうだったのか一番古い資料にあたってみようと調べ始めたのが富原守清の「琉球音楽考」です。苦労し読み進める中、金武良仁による古い音源を聞くと理論を踏まえたものになっていると分かり、論文と音源が対応しているということは信頼性が高いと感じました。理論を認識し、型(かた)を見出していく中、これは突き詰める価値があることだと確信したのです。演奏の違いに関する悩みは切実で、それを解決する唯一の手段だったので、研究にのめりこみました。研究は孤独で、型なんて無いんじゃないかという気持ちになることもありましたが、一つわかるとその次と理解が広がり、理論や型を発見できる面白さがあったから続けてこられました。

◇古典の強さ
古典というものは、何百年と長い年月をかけ繰り返されるなかで、自然と凝縮されこれ以上足したり引いたりする余地のない「型」として帰結します。こうきたらこうなる、という強さがある。弦を一つ弾くときにも、弦のもつ性格があって、そこに型(パターン)を見出しました。1拍の時、2拍の時、5拍の時、という部品を組み合わせて一曲が構成されています。聞いたことのないものでも、型に分解できたら理論的には歌えます。

◇よみがえった伊江村のうた
歌詩が90種以上も残っていた伊江早作田節(いいはいちくてんぶし)という楽譜がありました。伊江村の人も知らないというので、手を挙げ、現地の民俗芸能保存会と仕上げ披露することができました。主な行事の際には実演されるそうで、研究を役立てることができて嬉しかったです。

◇昔の人が表現しようとしたことに近づくために
理論や型を、議論の際の共通言語として使ってもらえたらと思います。理解がないと議論はできません。勝手な解釈ではなく、議論し修正すべきところはしていく。型にはひとつひとつ意味があるから、意味が分かればそれ以外のことはできないはずです。
今後は、規範になるような楽譜の整備と合わせて、音楽を具体的な言葉で伝えられるように、工夫し指導していきたいと思っています。
楽譜を理解しようとするのは、昔の人が表現しようとしたものに近づきたいから。今まで意識せずに演奏していたものを型として捉えることができて、生活から生まれた条理や考え方、表現といった昔の人がイメージしていたものに近づけているような気がします。

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