■相客に心せよ
佐川美術館
学芸員:松山早紀子(まつやまさきこ)
茶道では、釜にくんだ水を火にかけ、湯を沸かします。とても重要な道具であることから、お茶会を催すことを「釜を懸ける」といいます。新しい年を迎えた最初のお茶会を「初釜」といい、お稽古はじめの日でもあります。
初釜にいただく御菓子は流派によって異なりますが、表千家は常磐饅頭(ときわまんじゅう)、裏千家は花びら餅が定番菓子とされています。お茶席で、御菓子や御茶が運ばれたらお隣に「お先に頂戴します」と声をかけますが、これがとても大切な作法のひとつです。
茶の湯の大成者・千利休(せんのりきゅう)の教えである利休七則に「相客に心せよ」という教えがあります。「相客」とは同席したお客さまのこと、「心せよ」とは「気を配りましょう」ということです。例えば、1人の身勝手な振る舞いが周りの人々に不快感を与え、楽しいはずのお茶会が台無しになってしまうこともあります。つまり、同席したお客さま同士がお互いに気遣い、尊重し合い、共に楽しいひとときを過ごせるよう思いやることで、より心地よい空間になるという教えです。
これはお茶席に限ったことではなく、どんなときも大切な教えと心得ます。ご来館者さま同士がお互いに尊重し合うことで、美術館もより心地よい空間になるにちがいありません。
本年もご来館者さまには非日常を楽しんでいただけるよう、スタッフ一同「おもてなし」の心を大切に、より心地よい美術館を目指してまいります。
※開館情報につきましては、ホームページでご確認いただくか電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。
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