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壷中雑記(31)―歴史文化博物館から―~古代交易の証・サヌカイト~

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滋賀県愛荘町

これまで愛荘町では、土地の開発に伴って発掘調査を行ってきました。その調査において、石で作った道具である石器が確認されています。また、そのほとんどがサヌカイトと呼ばれる種類の石を用いて作られています。そこで今回は、石器の材料として、重宝された石材であるサヌカイトについて紹介します。

1.サヌカイトについて
サヌカイトの採取地として、日本では、香川県の金山、佐賀県の鬼ノ鼻山、そして関西では奈良県と大阪府の境に位置する二上山が知られています。
サヌカイトは、和名を讃岐岩と呼びます。和名からもわかるように、最初に発見されたのが香川県です。明治8年(1885)に明治政府に地質学者として招かれたドイツ人、H・E・ナウマンが岩石学的特徴として、叩くことによって発する、かん高い金属音に着目したようです。その後、ナウマンからこの岩石のことを聞いた、ドイツ人のE・ヴァインシェンクが、明治24年(1891)に「サヌカイト」と命名しました。
サヌカイトは、地下から地表に噴出したマグマが急に冷えてできており、色は黒く、非常に緻密で硬い性質を有しています。この石を割ると、ガラス破片のように鋭い形状を見ることができます。このことから、ナイフや石鏃等の、石器として利用されました。
サヌカイトを利用して作られた石器は、滋賀県内での発掘調査でも度々出土しています。中でも大津市石山にある蛍谷遺跡からは全長11cmを超えるナイフ形石器が見つかり、旧石器時代のものとして知られています。

2.町内でサヌカイトが見つかっている遺跡
1)なまず遺跡
愛荘町長野に位置する遺跡です。この遺跡では、これまで4回の発掘調査が行われ、出土した遺構や遺物から、縄文時代晩期から奈良時代前期までの性格を有する遺跡であることがわかってきました。平成12年(2000)に行われた4回目の発掘調査では、サヌカイトの石器が2点見つかっています。いずれも4~5cmほどの小型のもので用途は不明ですが、加工された痕跡をみることができます。

2)八木代遺跡
愛荘町安孫子に位置する遺跡です。この遺跡では、発掘調査が行われていないため、遺跡の性格等は判明していません。しかし、平成以降に遺跡の中にある農地を耕作していたところ、縄文時代晩期頃のサヌカイトの石鏃や、石屑等、100点余りの石器が採集されました。石屑を見ると、加工の跡が見受けられることから、この遺跡においても、かつては生活が営まれていたことが推定できます。

3.まとめ
このように、愛荘町では採掘できないサヌカイトを用いた石器が出土していることは、縄文時代頃から他地域との交易があり、また当時の生活の様子を考える上で、貴重な資料といえるでしょう。

愛荘町立歴史文化博物館学芸員 梅本匠

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