食生活を変えた電気冷蔵庫
電気冷蔵庫は飲み物を冷やすことができ、お肉や魚、野菜、調理した食べ物、冷凍食品の保存等私たちの暮らしを豊かにしてくれる製品です。
冷蔵庫のない時代は、どうだったのでしょう。
「生もの」の肉や魚は干したり、塩や味噌漬け、鮒ずし等の発酵食「なれずし」として保存してきました。食料を買って保管するという考えは基本的にはなく、行商の人や地元のお店でその日食べる分だけ買っていました。調理した食べ物の保管は「蝿入(はえい)らず(蝿帳(はえちょう))」が、冷蔵庫ができる以前からの衛生と保管のための必需品でした。「蝿入らず」は、料理に蝿がたからないように工夫された小棚(こだな)で棚のまわりを金網や紗(しゃ)で囲んでいるため通気性がよいので、カビや腐敗も防ぎました。ただし、長時間入れておくことはできませんでした。当時は、「まだ食べられるか?」と臭いをかいだり、少し口に含んだりして、腐敗していないか確認していました。「もったいない」と言いながら、ネ臭いご飯はお茶をかけ洗ってから食べたり、おもちはカビている所をとって食べたりしていました。
明治時代になり「氷箱」と呼ばれる氷冷蔵庫が登場します。写真のように前面に扉のついた長方形の木の箱で内側にブリキが貼られていました。上の扉に氷を入れ、その冷気で下の食べものを冷やしました。しかし、町内では仕出し屋さんやお店屋さんなどに限られていました。
電気冷蔵庫が各家庭に普及し始めたのは昭和30年(1955)頃からで、1ドアの中に製氷室のあるもので、現在よりかなり小さな物でした。当時の広告に「『氷がつくれる…など お台所の宝庫』水晶のような美しい四角な氷が手軽に作れる」と書かれています。水で溶いた粉ジュースの素を型に入れ製氷室でアイスキャンデーを作ったり、かき氷を作るのが子どもの楽しみでしたが、まだまだ冷蔵庫を使いこなすところまではいきませんでした。
その後、2ドアの冷蔵庫が一般的になり、昭和53年には普及率が99%に達しました。以降、冷蔵庫は野菜や肉、生魚、冷凍食品などを快適に保管できるよう大型化していきます。
大型電気冷蔵庫の誕生は、私たちの買い物の仕方、生活の在り様を変えました。昭和30年代から誕生し始めたスーパーマーケットとあいまって、その日必要なものを必要な分だけ買うスタイルから、まとめ買いのスタイルに変わっていきました。余ってもいい、いろんな食材を買っても冷蔵庫があるから大丈夫と言う「食の大量消費時代」が到来したのでした。
テレビや洗濯機、冷蔵庫の三種の神器が家にやってきたことで、生活は便利になり、快適なライフスタイルに変わりました。しかし一方、失ったものも多くあったのではないでしょうか。
参考文献:日本の主婦100年の食卓、昔の道具百科、昔のくらしの道具事典、パナソニック社史
協力:能登川博物館、ノセデン
問合先:ふるさとプロジェクト(図書館)
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