■平安時代の近江ブランド 緑釉(りょくゆう)陶器
令和6年3月19日付けで、甲南町森尻の矢川神社木造神像4躯(く)と、春日北窯跡(ようせき)及び出土品が滋賀県の文化財指定を受けました。
春日北窯跡は、水口町春日に所在する平安時代の10世紀初頭から後半にかけての窯跡で、灰釉(かいゆう)陶器、緑釉陶器、窯詰めに使用された窯道具と少量の須恵器(すえき)が出土しています。
灰釉陶器や緑釉陶器は中国製陶磁器や金属器を模してつくられたものです。祭祀儀礼用や食器が中心であり、平安京の貴族層とともに地域の富裕層にまで広く浸透していたことに特徴があります。
これまで平安時代の灰釉陶器の生産地は東海地方とされており、県内では灰釉陶器の窯跡はみつかっていませんでしたが、春日北窯跡の調査により、10世紀初頭に東海地方の技術を受け入れ、近江で生産されたことが初めて確認できました。
緑釉陶器は東海地方や京都府、滋賀県などの限られた地域で生産されていました。県内の緑釉陶器の窯跡は、東近江市から日野町そして甲賀市にかけて確認されています。10世紀後半には、大消費地である平安京で使用された緑釉陶器の大半が近江産と判断されることから、近江はその時期の一大生産地と考えられてきました。鮮やかな緑色をした緑釉陶器は当時の人々を魅了したことでしょう。
10世紀後半は、紫式部(むらさきしきぶ)が生きた平安時代にあたります。近江で生産された緑釉陶器は、源氏物語の美しい世界で、人々の傍らに、いろどりを添えていたのかもしれません。
問合せ:歴史文化財課 埋蔵文化財係
【電話】69-2251【FAX】69-2293
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