■古代のSDGs
SDGsとは国連で採択された、持続可能な開発目標です。17の目標で構成され、その中の「目標12:つくる責任つかう責任」は日本においても主要な課題であり、持続可能な消費と生産の取り組みが求められています。
実はこのような取り組みは、奈良時代に実践されていました。今回はその一端が分かる資料を紹介します。
下記の写真は草津市追分に所在する大将軍遺跡(だいしょうぐんいせき)で出土した須恵器(すえき)の坏(つき)です。坏は食器として利用され、蓋として用いたものを「坏蓋(つきふた)」、お椀として用いたものを「坏身(つきみ)」と呼んでいます。この写真にある坏蓋の裏側には墨をすった跡が残っていることから、逆さにして硯(すずり)としても利用していたことが分かります。このように硯以外の使用目的で作られた土器が転じたと考えられることから「転用硯(てんようけん)」と呼ばれています。転用硯は須恵器の坏に多く見られ、その背景として当時食器として大量に流通し、比較的容易に入手できたからと考えられます。
また、坏蓋には宝珠(ほうじゅ)と呼ばれるつまみが付き、反対にした時に安定しにくいため、下記の写真のように坏身の上に坏蓋を乗せることで利用された可能性があります。こうすることで坏身が台の役割を果たし、机上でも安定して利用できたのではないでしょうか。
これらの取り組みから、限られた資源を最大限有効活用しようとする当時の人々の工夫がうかがえます。皆さんも奈良時代へ思いをはせつつ、SDGsの取り組みの一環として、身の回りで転用できるモノを見つけてみても面白いかもしれません。
※写真は、本紙の裏表紙をご覧ください。
問合せ:歴史文化財課(6階)
【電話】561-2429
【FAX】561-2488
<この記事についてアンケートにご協力ください。>