■ウトロ地区に学ぶ「人権を大切にするまち」
2022年4月、京都府宇治市に「ウトロ平和祈念館」が開館しました。草津市からも多くの団体や個人が研修のために訪問しています。9月には、市の人権セミナーで職員の方に講演していただきました。
ウトロ平和祈念館のパンフレットには、このように記されています。
ウトロは日本社会から「置き去りにされた」朝鮮人のまちでした。
ここには、さまざまな困難に直面しながらも声を上げ続けた人々と、ウトロに寄り添ってきた日本・在日・韓国の市民が協力して、人々の尊厳と生活を守ってきた歴史があります。そして、この歴史には、より良い社会、新しい未来へのヒントがあります。
今回はウトロ平和祈念館の思いをもとに人権を大切にするまちづくりについて考えます。
◇ウトロ地区に住む人々の姿から
ウトロ地区は、1940年から日本政府が推進した飛行場建設に集められた在日朝鮮人労働者たちの飯場跡に形成された集落です。
過酷な労働に従事することになった人々は、終戦後、多くが帰国を望みましたが、日本の植民地支配による故郷の生活基盤の破壊や社会的・政治的な混乱などにより、日本に留まらざるをえず、放置されることとなりました。
ウトロ地区の人々は、過酷な差別と貧困の中での生活を強いられることになりました。その中で、民族教育の保障・生活環境の改善などに向けて取り組んだり、移り住んでくる多くの朝鮮人を受け入れ、助け合いながら生活できるセーフティーネットとしての役割を担ったりしました。
◇ウトロ地区に関わる日本の人々の姿から
ウトロ地区では、上下水道などのインフラが整備されず、劣悪な衛生環境での生活を余儀なくされていました。この状況を知った日本の人々が「深刻な人権問題」としてウトロ地区の人々と協働し、地区の生活改善を求める運動を1986年から展開しました。その結果、ウトロ地区に上水道が敷設されることになり、生活環境の改善に貢献しました。
◇私たちのまちづくりに生かす
ウトロ地区の歴史や生きてきた人々の姿から人権を大切にするまちづくりに生かすポイントが見えてきます。
一つ目は、不合理な状況に対して、行動を起こすことの大切さです。貧困や差別など困難な状況に直面し、不安を抱えながらも人権の保障を求めたウトロ地区の人々の思いと行動は、周りの人だけでなく、国を動かすなど、社会を変えていきました。
二つ目は、「出会い」と「交流」の大切さです。ウトロ地区を支援する日本人は、地区の人々との交流を重ねながら、支援活動に取り組んできました。人と出会い、関わり続けることで〝その人自身を知る〟〝その人の置かれてきた背景(歴史)を知る〟すなわち、人を「正しく知る」ことの積み重ねは、人と人とをつなげる力になると思います。インターネット上をはじめ、さまざまな形で行われているヘイトスピーチ(特定の国の出身者や集団などに対して著しく侮辱したり、地域社会から排除したりしようとする差別的言動)は、「正しく知らない」からこそ起こるのではないでしょうか。
三つ目は、「社会の問題を自分の問題としてとらえること」の大切さです。自分には関係ない、関心がないとするのではなく、自分とその人権問題とのつながりを考えたり、自分の経験と重ねて考えたりすることが、身の回りにある問題を解決していくことにつながります。
これらのポイントを「より良い社会」「新しい未来へのヒント」にしていきたいものです。
問合せ:人権センター(大路二、キラリエ草津3階)
【電話】563-1177
【FAX】563-7070
<この記事についてアンケートにご協力ください。>