■下笠のサンヤレ踊り子役衣装
「サンヤレ」という囃子詞(はやしことば)で知られる「草津のサンヤレ踊り」は、市内の矢倉・下笠・吉田・志那・志那中・片岡・長束の7地域で5月3日に踊る伝統芸能です。「サンヤレ」という言葉の語源は、はっきりとは分かっていませんが「幸あれ」という意味であるともいわれています。華やかな扮装(ふんそう)で「サンヤレ」と短い囃子詞を繰り返すサンヤレ踊りは、中世に京都で流行した疫病除けの芸能である「風流囃子物(ふりゅうはやしもの)」の系譜を引くとされ、その古い形を今に伝えています。令和4(2022)年11月には、栗東市の「小杖神社の芸能祭礼」とともに『近江湖南のサンヤレ踊り』が、全国各地の「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。
サンヤレ踊りの特徴といえば、着飾った子どもたちを中心に、鼓や太鼓、笛、ササラなどの楽器で囃し立てながら踊ることですが、その中でも「下笠のサンヤレ踊り」は色鮮やかな衣装を身に付けることで知られています。子どもたちの衣装は特に華やかで、吉祥文様の長着に色とりどりの襷(たすき)などを身に付け、頭に花笠を被ります。
写真の衣装は、かつて太鼓打ちをつとめた家から寄贈を受けたものです。平成10(1998)年に、当時小学校6年生だった男性が着用しました。長着は本人の体に合わせて仕立てられたもので、襷や手甲、脚絆(きゃはん)、長着の装飾、足袋(たび)などは家族で作ったそうです。「手甲や脚絆に紅白の糸で刺繍を入れる」「白い足袋を黄色に染める」「編んだ組紐を鈴とともに長着に縫い付ける」など、家族によって、一つ一つ丁寧に用意され、名誉ある大きな舞台に立つ子への家族の気持ちを感じさせます。近世の衣装だけでなく、このような現代の衣装からも、伝統芸能がどのように継承されてきたのか、その一端を垣間見ることができ、継承の歴史を知る貴重な資料といえます。
草津宿街道交流館では、市民の皆さんから寄贈を受けた資料を展示する「郷土を伝えるもの―寄贈資料展―」を5月26日(日)まで開催中です。この衣装も展示していますので、ぜひお越しください。
※写真は本紙裏表紙をご覧ください。
問合せ:草津宿街道交流館(草津三)
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