■さまざまな「草津」を描いた広重
江戸時代の浮世絵版画は、上方絵と呼ばれる大坂で作られたものを除き、ほとんどは江戸の版元から出版されていました。役者絵・美人画・武者絵など、さまざまなジャンルがありますが、葛飾北斎や歌川広重が得意としたのが風景画です。江戸で出版された風景画の画題を見ると、江戸や富士山は別格としても、草津市域は全国屈指の数が描かれているといえるでしょう。
風景画は複数の絵をセットにした揃物(そろいもの)として出版されることが多いのですが、草津は街道シリーズの東海道と中山道の双方に描かれる他、近江八景では矢橋の帰帆(矢橋町)が、諸国六玉川(しょこくむたまがわ)では萩の玉川(野路)が、美人東海道では青花摘(山田・笠縫)が題材となって登場するからです。
また、これらの揃物は一種類だけではなく、例えば歌川広重が手掛けた「東海道五十三次」は未完のものを含めると20種類以上もあるとされ、それだけ「草津」として描かれた場所や構図が豊富になります。
広重が描いた揃物のうち保永堂(ほえいどう)から出版された東海道五拾三次には、最高傑作に数えられる蒲原(かんばら)・夜の雪(静岡県)、庄野(しょうの)・白雨(はくう)(三重県)も含まれ、思い切った誇張表現によって情感が加味され、絵の魅力が高められています。
一方、佐野喜版(さのきばん)は、詳細な筆致と丁寧な彫りによって街道風景をよく伝えています。各々の絵に狂歌(風刺・滑稽などを読む短歌)が添えられ、狂歌入東海道(きょうかいりとうかいどう)とも称されています。
草津の絵柄は、いずれも名物うばがもちやの店先(当時は矢倉)の様子です。保永堂版は、旅人で賑わう大きな店舗の前を早駕籠(はやかご)と荷物が対向に行き過ぎる動きのある情景で、佐野喜版は俯瞰(ふかん)の角度を変えて詳細に店内を描いています。
当館のFacebookやX、Instagramで、この佐野喜版の狂歌入東海道を掲載していますので、ぜひご覧ください。
問い合わせ先:草津宿街道交流館(草津三)
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