■古(いにしえ)写真館(6) 市立資料館 建物の歩み
市立資料館(郷土資料館、歴史民俗資料館)は今年3月に開館50周年を迎えました。今回は資料館の立地や建物の歩みを、古写真とともに紹介します。
郷土資料館が建つ新町二丁目の南角地は、江戸時代初期に朱印船貿易で活躍しベトナムに渡った八幡商人・西村太郎右衛門を輩出した西村家の屋敷がありました。現在は石碑と看板が建てられ、そのことを訪れる人々に伝えています。明治18(1885)年、この場所を含めた278坪を、移転先を求めていた八幡警察署の敷地として当時の八幡町から寄付され、翌19年7月に開署式が行われました。写真のとおり、擬洋風な建物で、敷地入口の石柱は現在も残っています。
庁舎の奥には官舎として使用された日本家屋があります。元は、向かいに本宅のある八幡商人・森五郎兵衛家の控宅で、ゲストハウスのような役割を担っていました。その名残として、現在も華やかな赤壁や純銀揉(も)みの襖(ふすま)などが見られます。
昭和28年になると、庁舎建物の大幅改築と一部増築が行われ、外観も現在のようになります。設計は、後に本市の名誉市民第1号となるウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏でした。同氏が設立したヴォーリズ建築事務所の所蔵資料からは、改築時の図面20点が発見され、2階に集会室が新築されたことや、古材が利用されたことが確認できます。写真は起工式での1枚で、署長、八幡町長、大工責任者をはじめとした関係者が出席しました。
警察制度の改正などにより、昭和46年に近江八幡警察署が出町に新設されます。それに伴い新町の署は廃止となり、残された建物は市へと寄付されました。この頃旧八幡町では、八幡堀再生運動が起こるなど、地域の歴史や文化に関心が高まっていました。旧八幡警察署建物は、地域の歴史文化活動の拠点として活用することになり、昭和49年3月1日、県下第1号となる市町村立の資料館として郷土資料館が開館しました。その後、官舎として使用されていた建物も整備が進められ、昭和53年に歴史民俗資料館が加わり、現在の市立資料館へと続きます。
※写真は本紙をご覧ください
1.旧八幡警察署庁舎
2.起工式(昭和28年)
■古写真パネルによる秋季企画展「資料館が見つめた風景」を開催
会期:9月27日(金)~12月22日(日)
会場:市立資料館
※詳しくは本紙10月号でお知らせします。
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