虐待や貧困などで親と一緒に暮らせない子どもたちも、家庭の温かさを感じながら成長してほしい―。
里親は、そんな子どもたちの幸せを願い、寄り添う存在です。
現在、親元で暮らせず、「社会的養護」が必要な子どもは全国で4万人を超えています。
10月は里親月間。養育里親として子どもを受け入れている市内の夫婦や、支える人たちに耳を傾けながら、里親制度について考えてみます。
■親元から離れた子を育てる「里親制度」の現状
家族と離れて暮らす子どもを育てる里親制度。県内の登録数は年々増加していますが、里親家庭を必要とする子どもたちが多くいます。
▽特別じゃない家族の形
「おとうちゃん、おかあちゃん」。
幼いきょうだいは北村聡一郎(きたむらそういちろう)さん・光代(みつよ)さん夫婦に呼び掛けます。血縁関係はありませんが「笑顔で過ごしている姿を見るのがうれしい」と目を細める2人。2年前から子どもたちの「里親」となり、愛情を注いでいます。
昭和22年制定の児童福祉法で初めて法律に明記された日本の里親制度。子どもを受け入れたいと考える世帯があらかじめ県に登録し、委託を受けて子どもを預かる仕組みです。
受け入れ期間は子どもの置かれた状況で変わりますが、養子縁組と異なり、法律上の家族関係は生じません。
それでも多くの里親は、北村さん夫婦のように実の親と変わらない愛情を注ぎ続けています。
▽里親登録数が少ない熊本
親の死亡や経済的な困窮、虐待といったさまざまな事情で親元を離れる子どもたち。令和3年度には全国で約4万2千人、県内でも642人を数えます。
平成28年の法改正で「施設から家庭へ」と方針転換した国は里親委託を進めていますが、約8割は児童養護施設や乳児院などで生活。残りの約2割が里親家庭の他、複数の子を家庭的な環境で育てるファミリーホームで暮らしているのが現状です。
理由の一つは登録里親数が少ないこと。県内の登録里親数は令和3年度で278世帯。里親委託率も15・6%と過去最高になりましたが、全国平均の23・5%と比べると低い数字にとどまっています。
「徐々に増えてはいますが、必要としている子どもの数に比べると足りません」と子育て支援課の髙野遥平(たかのようへい)さんは話します。
▽社会全体の理解が不可欠
「さまざまな年齢の子どもを家庭で受け入れるためには、登録里親数をもっと増やす必要があります」と髙野さんは力を込めます。
「登録が少ないと里親委託自体を選びにくいですし、子ども自身にも選択の自由がありません。選択肢を増やすためにも、社会全体の理解や環境整備を進めていく必要があります」
■データから見る県の現状
県内では里親の登録数が令和3年度に過去最多の278世帯となり、里親などへ委託される児童も少しずつ増え始めています。しかし、全国と比べると委託率は依然として低い状況です。現在、家庭に近い環境での養育が児童の成長・発達に良い影響を与えるとし、里親などへの委託が推進されています。
市では7世帯の里親登録があり、2世帯が実際に里子の委託を受け、地域の中で生活を共にしています。
・里親等委託率の低さについて
県内には児童養護施設が12カ所、乳児院が3カ所あるなど、社会的養護の受け皿が充実していたことも要因の一つと推測される
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