■インタビュー 里親の思い 血のつながりがなくても愛おしい家族
子どもは成長の過程で、信頼できる特定の大人から温かい愛情を受けて育つことが必要です。
里親2年目で、2人のきょうだいを育てる北村聡一郎(きたむらそういちろう)さん(写真(下)※本紙参照)に話を聞きました。
▽子どものためにできる「何か」
妻と一緒に、児童発達支援事業や放課後児童クラブなどを運営しています。その中で、生みの親による養育が難しい子どもたちと関わることがあり、ボランティアで子どもを一時的に預かることをしていました。
そういった経験から「里親になれば少しでも救える子どもたちがいるのではないか」と考えていました。
3人の実子たちに相談したところ、後押しをしてくれ、里親を始めることを決心。末っ子が大学に進学したタイミングで、「里親になりたい」と問い合わせました。
里親登録のために、里親支援センターの面接を経て、必要な講座の受講や施設での実習を夫婦ともに終え、約1年後、2人のきょうだいを迎え入れました。
▽積み重ねる時間を大切に
子どもたちと打ち解けるまでには時間が必要でした。最近まで車に乗ると「どこに行くの」と必ず聞かれました。どこかに連れていかれるという不安があったんだと思います。
本人たちの気持ちの安定を一番に考え、すぐに環境を変えないよう意識をしました。「一緒にいるよ」と言葉で伝えたり、抱きしめながら愛情を伝えたりして、日々の積み重ねを大切にしました。
今では私たちを親と認識して頼ってくれることがうれしいし、かわいいです。
最初は、通っている保育所の運動会でダンスを踊る時、2人はじっとしていました。まだ不安な気持ちが残っているんだなと思っていたのですが、最近は少しずつ踊ってくれますし、笑顔が増えました。血のつながりはないですが家族として愛おしく思います。
うちの場合は、ほめるときも叱るときも全力です。子どもたちを叱る前には、これが良いことか悪いことか、まず本人に考えさせるようにしています。
子どもの意見を聞いてそれでもだめなことはしっかり伝えます。施設の話も取り入れつつ、北村家のルールで教育しています。
▽深まった家族の絆
現在は、実子を育てていた時より余裕があるように感じます。経験があったことも理由ですが、親戚をはじめとする周りの人たちの協力のおかげです。
私たちが里親をやると決めて両親や親戚に話をした時は驚かれましたが、今では「何かあったら言って」と協力してくれるのでありがたいです。
実子たちは子どもたちをとてもかわいがってくれて、保育所のお迎えもしてくれますし、休みの日は積極的に遊びに連れて行ってくれます。「協力するよ。おれの弟として育てる」とも言ってくれて、とてもうれしく思います。
夫婦で子どもたちの変化を見つけることも楽しみの一つです。妻と「次はこうしてみようか」などと話し合う機会も増えました。
里親を始めたおかげで、以前よりもっと家族の絆が深まったと感じています。
▽地域には包み隠さず話す
地域の皆さんには里子を育てていることを伝えています。地域の集まりに連れていくと、皆さん温かく迎えてくれ、子どもたちもすっかりなついています。
関係機関の見守りも心強いです。半年に一度、児童相談所や市の子育て支援課、保健師さん、保育所の先生とミーティングをして、子どもの状況について話し合っています。
▽勇気を持って踏み出して
さまざまな事情から実親と暮らせず、育てのお父さんやお母さんがいたら助かる子どもたちがいます。私たち夫婦はそんな子や親御さんの手助けをしたいと思って里親を始めました。
安易に「ぜひ里親になってください」とは言えません。子どもを迎え入れた直後は、トラブルや苦しいことがあるかもしれません。でも、やった分だけたくさんの喜びや学びがきっとあります。
まずは多くの人に里親制度について知ってもらい、その上で里親にチャレンジする人が増えてくるとうれしいです。里親家庭をやってみたいと思う人たちは、ぜひ一歩踏み出してみてください。
困ったときには周りの人たちも助けてくれる仲間もいますので、次第に不安はなくなっていくのではないでしょうか。
■里親の種類
里親の種類には大きく分けて、4つの種類があります。
▽養育里親
原則18歳未満の子どもを、家庭に戻るまでの間や自立するまでの間、養育します。期間は1年以内の短期、それ以上の長期の場合もあります。
▽専門里親
養育里親のうち、虐待や非行、障害などの理由で、専門的な援助を必要とする子どもを養育する里親です。
※別途要件があります。
▽養子縁組里親
養子縁組(基本は特別養子縁組)を結ぶことを前提とした里親です。養子縁組が成立するまでの間、里親として一緒に生活します。
▽親族里親
実親が死亡、行方不明などにより養育できない場合に、祖父母などの親族が子どもを養育する里親です。
※上記の他にも、正月や夏休みなどの長期休暇に、施設で暮らす子どもを数日から1週間ほど預かる「季節里親」や週末に施設の子どもを預かる「週末里親」などがあります
■里親になるためには
特別な資格や条件は必要ありませんが、以下の基本的な4つの要件は定められています。
(1)要保護児童の養育について理解および熱意と児童に対する豊かな愛情を有していること。
(2)経済的に困窮していないこと。
(3)養育里親研修を終了したこと。
(4)里親本人、またはその同居人が欠格事由に該当していないこと。
▽里親になるためのステップ
〔相談〕
里親支援センターにご相談ください。
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〔面談〕
制度の説明とともに、里親登録をしたい理由やどんな家庭を築きたいかなど、さまざまなことを聞きます。
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〔調査〕
里親支援センターの職員が家庭訪問を行い、子どもが安心して安全に暮らせるかを確認します。
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〔研修〕
里親の役割や子どもの行動、虐待による子どもへの影響や安全な養育についてなど理解を深めていきます。
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〔審議会〕
面接・家庭訪問・研修を通して集められた情報が共有され、里親登録が可能であるか審議が行われます。
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〔認定・登録〕
審議会での結果をもとに、熊本県知事が認定し、里親名簿へ登録されます。
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