■里親は子どもの命をつなぐ「受け皿」
子どもを巡る環境が多様化するなか、里親にもきめ細かい対応が求められています。里親や子どもが孤立しないよう、手厚い支援体制の確立に向けた取り組みが進んでいます。
▽チームで育てる里親支援センター
さまざまな事情で家族と暮らせない子どもに家庭の温もりを与えてくれる里親。登録数や委託率を増やそうと、行政と民間が一丸となって取り組みを進めています。
県では新たに里親支援センターを県内3カ所に設置し、今年4月から運用を始めました。市内では「養育家庭支援センターきらきら」(熊本市、以下:きらきら)が県から里親支援センターの認可を受け、支援に取り組んでいます。
センターでは、児童相談所が主に行なっていた里親を増やすための活動「リクルート」の他、里親登録前や子どもを迎え入れた後の研修、子どもに最も合う里親を条件や相性などを考慮して選び調整する「マッチング」、養育中の相談や支援などを行っています。
▽顔の見える支援を継続的に
「里親が悩み事や困り事などを気軽に相談しやすい環境づくりを心掛けています」と話すのは、きらきらで里親等支援員を務める田中一幸(たなかかずゆき)さん。「少子化の中にあっても支援を必要とする子どもはたくさんいます。関係機関と連携し、里親制度の普及を進めています」
きらきらでは「里親になりたい」という問い合わせを受けたときから継続的に担当者が関わります。行政機関では人事異動などで担当者が代わることもありますが、なるべく同じメンバーがサポートを続けられるのが利点です。
「継続的に相談しやすい環境をつくっているので、信頼関係も築きやすいです」と田中さんは力を込めます。
▽「子どもの幸せ」が一番の目標
「里親委託後も電話や家庭訪問などで定期的に近況を聞いて相談に乗ったり、子どもが通う保育所や学校などとも連携したりしながら、お子さんにとってどんな養育がいいのか、里親と一緒に考えていきます」と話す田中さん。
「里親としてお子さんを預かる期間は、自立までの十数年間の場合もあれば、数日、数カ月の場合もあります。家庭の状況に応じて受け入れることもできます。ぜひ一度、私たちの話を聞きに来てほしいですね」
▽社会の理解が希望になる
「里親は命をつなぐ『受け皿』。助けを求めている子どもたちが大勢います」。県里親協議会副会長の芹川幸良子(せりかわさよこ)さん(袈裟尾)は里親が足りていない現状に危機感を持っています。
理由は子どもを巡る環境の悪化。令和3年度に県内の児童相談所が対応した虐待の相談は2352件。前年度から78件減少しましたが、高止まりが続いています。
「生まれてすぐ施設に預けられ、集団生活しか知らない子、虐待されて親からの愛情を知らずに育った子も大勢います。幼少期に育ててくれる特定の大人との間で信頼関係を築く『愛着形成』があるかどうかが、その後の子どもの自己肯定感や安心感に大きく関わります」と里親の増加が望まれる理由を話します。
「里親制度は遠いもののように思うかもしれませんが、病気や事故で自分が子どもを預ける側になるかもしれません。安心して預ける、預かるということが、子育てと同じぐらい当たり前の社会になってほしいです」
▽里親制度を地域で支える
里親家庭が幸せに暮らしていくには、地域の理解や協力が不可欠。貧困や望まない妊娠などを理由に、実の親と暮らすことができない子どもが県内に600人以上いるのが現状です。
里親として2人のきょうだいを預かる北村さん夫婦は「この子たちは決して特別じゃない。当たり前に家庭の幸せを感じて暮らしてほしいんです」と話し、続けます。
「親と一緒に暮らせずに困っている子どもがいないことが一番。でも現実は助けを求めている子どもたちがたくさんいます。そんなとき、心の寂しさに寄り添い、できることはないか考え続えられる社会になってほしい。一人でも多くの子どもに『生まれてきてよかった』と思ってほしいですね」
■里親への支援
里親養育は子どもを取り巻くさまざまな機関がチームとなり、一緒に子どもの育ちを支えます。
▽主な支援機関と役割
・里親支援センター
里親支援を総合的にコーディネート。
・熊本県中央児童相談所
養育状況を把握し、適切な助言を行いながら、里親養育を支援します。
・里親支援専門相談員
里親家庭の一番近くで、子どもと里親に寄り添います。
・熊本県里親協議会
里親相互のつながりの場を提供。
■相談・問い合わせ先
・養育家庭支援センターきらきら【電話】096-383-8100【E-mail】kirakira@jiaien.or.jp
毎月第2(金)の午前10時、午後2時、午後7時に、オンライン説明会を開催中。
・熊本県中央児童相談所【電話】096-381-4451
・菊池市子育て支援課【電話】0968-25-7214
■里親講座 in 菊池
里親に少しでも興味があれば、ぜひ気軽にご参加ください。
日時:10月25日(金)午後6時~7時
場所:中央公民館 小会議室2
講師:養育家庭支援センターきらきら 田中一幸さん
内容:里親制度や子どもたちを取り巻く状況の説明および質疑応答
定員:10人(要事前申し込み)
申込期限:10月18日(金)
申し込み・問い合わせ先:子育て支援課 こども・女性相談係
【電話】0968-25-7214
問い合わせ先:子育て支援課
【電話】0968-25-7214
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