■腸内環境を良好に食事で免疫力アップ
管理栄養士 竹村理帆
人間の免疫力は、20代をピークに加齢とともに衰えると言われています。免疫力のカギを握っているのは、腸であることをご存じでしょうか。腸は食物を消化吸収するだけではなく、食物と一緒に入った細菌やウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐための免疫機能が備わっています。腸には免疫に関わる細胞が約7割存在しており、腸内環境がよい状態に保たれていないと腸の免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすいだけではなく肥満、アレルギー、炎症性腸疾患、認知症や発がん物質の生成にも関与していることが知られています。
それでは、どうすれば免疫力を上げられる腸内環境になるのでしょうか。食事を中心にポイントを説明します。
腸内では、悪玉菌よりも善玉菌の多い環境を作ることが重要です。そのために有効なのが「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」の摂取です。
プロバイオティクスとは腸内環境のバランスを整える善玉菌のことです。ビフィズス菌や乳酸菌、納豆菌がこれにあたり、菌を直接摂取することで腸の調子を整えます。ヨーグルトやチーズなどの乳製品や乳酸菌飲料、納豆や味噌、ぬか漬け、キムチなどに含まれます。これらを継続的に摂取することで善玉菌を増やすことができますが、乳酸菌は熱に弱いため、加熱せずに食べることをお勧めします。
プレバイオティクスは腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす作用のある成分や食品のことです。食物繊維やオリゴ糖が該当し、野菜や果物、こんにゃく、海藻、きのこ類、はちみつなどが主な食品です。食物繊維は一日18~19gの摂取が目安ですが、達成するのは難しい量です。生野菜では両手に山盛り一杯、加熱野菜は片手に山盛り一杯を三食が目安になります。
反対に高カロリー、高脂肪に偏った食事は、悪玉菌が増加する原因のひとつです。外食やコンビニ食が多い方、野菜が苦手で偏食の方は注意が必要です。工夫として、ヨーグルトを一品追加する、野菜やきのこなどをたっぷりとれる献立を選ぶ、肉や揚げ物などを控えて魚や大豆製品のおかずにする、という点を意識するといいでしょう。
とはいえ、腸内環境も免疫細胞の働きも、人によって大きく異なりますので、ある特定の食品を食べれば免疫力が高まるというわけではありません。また、ある人に効果があったからと言って、別の人に効果があるとも限りません。前述した内容を意識しながらもバランスよく食べることが大切です。また、食事以外でも体を動かす、ストレスをためない、十分に休むことも心がけていきましょう。
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