■健康寿命と運動について
作業療法士 水口健史
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。これは、歩くことや食事、排泄などで介護を必要とせずに生活できる期間とも捉えることができます。
令和元年における我が国の平均寿命(0歳における平均余命)は男性81歳、女性87歳といわれています※1。一方、健康寿命は男性72歳、女性75歳となっており、平均寿命と健康寿命には10歳ほどの差があります。つまり、私たちは亡くなるまでに10年ほど介護を受けながら生活していることになります。
健康な状態を維持することが自立した生活を送ることにつながります。食事や睡眠など、病気を予防するために大切なことはたくさんあります。その中から今回は、運動を行う際のポイントについて紹介します。運動により筋力や身体機能、骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスクが低減することが明らかにされています。また、病気の発症リスクや早期の死亡リスクとの関連も報告されており、長期的な健康増進効果も確認されています。
運動を行うにあたり、トレーニングの原理や原則に基づいて行うと、より効果的になると言われています※2。トレーニングの原理や原則については、次のような考え方があります。
(1)ある程度の負荷をかけた運動を行いましょう。日常生活の中で発揮する力以上の負荷量とし、かなり楽~ややきつく感じる程度の運動を目安にしましょう。
(2)継続することが大きな力になります。ただし、決して無理をしないようにしましょう。
(3)バランス良く体を鍛えましょう。散歩やボールを使う体操など、いろいろな運動を組み合わせると効果的です。
(4)トレーニングの内容は、能力に合わせて決めましょう。周りの方と同じ運動が自分に適しているとは限りません。また、能力の変化に合わせて、運動の量や難しさを変化させましょう。
これらのことを意識することで、普段行っている運動がさらに効果的になると言われています。病気などで通院中の方や、運動に不安のある方は、かかりつけの医師に相談してから行うようにしましょう。安全に注意しながら運動を楽しみ、継続することで健康な生活を送りましょう。
※1 令和元年簡易生命表の概況
※2 運動プログラム作成のための原理原則安全で効果的な運動を行うためにいずれも厚生労働省
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