◆地域で広がる啓発
昨年、市の講座を受けて熱中症対策アドバイザーになった大野文さん。地域の子どもたちに無償の学習支援などをする市民団体「須賀の寺子屋」の代表で、日常的に子どもと関わる活動をしています。「暑い日に子どもたちの健康を守るために、正確な知識を学びたいと思い受講しました」と動機を話します。
◇環境を整える
受講後は、汗で水分と一緒に失われる電解質(イオン)を補給できるイオン飲料を常備するようにしたそうです。「熱中症の疑いがある子に、すぐに電解質を補給してもらい、症状が悪化しないようにしています」と説明します。以前から用意していた麦茶や、持参してもらっている飲み物での水分補給もこまめに呼び掛けています。
また夏休みの期間、同団体は小学生向けの特別教室を日中に開きます。夕方以降に始まる普段の活動以上に、室温の上昇を大野さんは気を付けているそうです。「開催時間に日陰になる部屋を、会場に選んでいます。もちろん、空調管理や換気も意識していますよ」。
◇声を掛け合う
大野さんは「子どもだけでなく、支援者側への対策の重要性にも気付かされました」と話します。学習支援の担い手は高齢者が多く、最高齢の83歳の方は2人います。飲み物を持参せず、水分補給を全くしない方もいるそうです。「支援者には飲み物を配って、必ず活動中に飲んでもらうようにしています」。
また、アドバイザーとなった昨年度、大野さんは支援者らに向けた研修会を2回開きました。正しい知識を共有したことで生まれたのが、お互いに声を掛け合う環境です。「子どもたちから『先生、飲んでいないよね』と飲み物を手渡されることも多いんです。私からの一方的な呼び掛けではなく、支援者も子どもたちも声を掛け合える環境になったことをうれしく思います」と笑顔で話します。
本年度は支援を利用する保護者向けにも研修をすると言う大野さん。「熱中症対策を伝える人」として、地域で知識の共有をして、啓発の輪を広げています。
◆情報を届け、未然に防ぐ
・大塚製薬
ニュートラシューティカルズ事業部
井口友里さん
「熱中症は誰にでも起こり得ることですが、しっかりと対策すれば防げます」と井口さん。「暑さの情報を積極的に確認して、危険な暑さに備えられると良いですね」と続けます。基本的な対策としては、食事・睡眠といった体調管理の徹底と、活動前の水分補給で体内に水分を蓄えておくことを勧めます。
また7月に控える七夕まつりや、夏休み中のイベントに行く場合の注意も呼び掛けます。「暑い中、イベントに参加するときには無理をしないことが大切です。またイベントに合わせて生活リズムを整えることを心掛けましょう」。
◇多くの人に伝える仕組み
令和2年に平塚市と協定を結んだ大塚製薬。市と連携して、さまざまな熱中症対策の啓発に取り組んでいます。
活動の中で同社が重きを置いているのが、多くの方に熱中症対策の情報を知ってもらうこと。「市民や関係団体の皆さんに情報を届けるためには、その仕組みづくりが重要です。そこで市と連携して『熱中症対策を伝える人』の育成を推進しています」と話します。「学んだ知識が地域でアウトプットされ、より多くの方に『伝わる』ことを期待しています」。
◇対策をアップデート
市では健康課を含む10課と、大塚製薬で連携して対策を進めています。「平塚市の取り組みは、他自治体からも注目されているんですよ」とほほ笑む井口さん。「熱中症対策はさまざまな場面で必要となるため、各部署の最新の状況を踏まえた対策を考えるなど、情報のアップデートが求められます」と説明します。「今後も情報共有や意見交換をして、関係部署・団体を巻き込んだ取り組みを一緒に進めていきたいです」と力強く語りました。
問い合わせ:健康課
【電話】55-2111
<この記事についてアンケートにご協力ください。>