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[特集]医療的ケア児と暮らす(2)

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神奈川県平塚市

◆地域の応援団とつなぐ
・医療的ケア児等コーディネーター 相原朗子(さえこ)さん
「相談支援専門員として10年、今まで聴いてきた家族の声が切実で、状況を何とかしたいという思いがずっとありました」
相原さんは、令和5年4月に3人設置された市の「医療的ケア児等コーディネーター」の1人。関係機関と連携して、多岐にまたがる支援の調整を担っている。「多くの機関や人に頼ってもらい、子どもを知ってもらうことでたくさんの応援団ができていきます」と相原さん。「困り事はまず、身近な専門家や市に相談してみてください」と呼び掛ける。
市のコーディネーターは相談支援専門員と看護師がペアで動く。相談支援専門員は未就学児と小学生以上の子どもで担当を分けて対応している。「新規の相談があったとき、年齢に合った制度や福祉サービスの提案と、医療面の不安やケアの悩みの両方に、具体的に対応できる体制は平塚の特徴であり強みです」。2職種のタッグで実現した支援もあった。少しずつ認知が進み、関係機関からこまめに連絡をもらえるようになっている。
相原さんは2カ月に1回の市との定例会で、さまざまな現場の声を届けている。またかねて希望の声があった、家族同士でつながれる形式の座談会を提案し、7月上旬に実現させた。「今後もより多くの支援を把握し、家族のニーズに合う支援をコーディネートしていきます」。

◆圭太さんの放課後に密着
6月21日の午後3時30分ごろ、ケア付き通学支援で帰宅した圭太さん。「おうちに着いたよ」と看護師の中島さんが声を掛ける。訪問介護が来るまでの1時間30分が、この日の在宅レスパイトだ。中島さんは「本人にとって『心地よいこと』や『遊び』は何かをよく観察して、次の支援につなげています」と話す。4回目となる今回、圭太さんは眠ったり手遊びしたり、リラックスして過ごしていた。

◆安心して任せられる
医療的ケア児の通学も、家族の負担の一つだ。「通学前の医療的ケアに2時間、登校時の学校と家の往復で1時間かかってしまうので、本当に大変です」と医療的ケア児の通学の苦労を語るのは、井上洋子さん(仮名)。息子の圭太さんは、移動にバギー(障がいなどで首や腰が不安定な子どもが乗る車椅子)が必要で、酸素の吸入も常にしているので、スクールバスでの通学ができない。子どもによっては、10分間で2回以上、たんの吸引が必要な場合もある。「通学の時間は決まっているので、仕事へ始業時間に出勤するのが厳しくなってしまいます」。
こうした家族の負担を減らそうと、令和4年度から県と市で始まったのが「医療的ケア付き通学支援」だ。看護師が同乗するので、家族も安心して任せられる。県と市で運用の違いはあるものの、用途に合わせて両方を使う人が多い。「通学支援のおかげで少し楽になりました。市の通学支援は、下校時も使えるので助かっています」。

◇組み合わせて使える
選択肢が増えた医療的ケア児の福祉サービスに、令和6年度から、「在宅レスパイト」が加わった。看護師が自宅に訪問して、医療的ケアの提供や介助をする。訪問看護と違い、依頼したケアをするだけでなく、「見守り」ができる。洋子さんは必要に応じて、複数のサービスを組み合わせて使っている。「皆さんにお願いして、自分の時間をうまく取れるようになりました」と笑顔で話す。
特に助けになっているのは、下校時のケア付き通学支援と在宅レスパイトの組み合わせだそう。「自分が家にいなくても、平気な時間ができるので助かります」と洋子さん。「在宅レスパイトは、1年間で上限48時間を30分単位で細かく使えるので、他の支援と組み合わせやすいです」と続ける。
市のケア付き通学支援と在宅レスパイトを担っている「ナスクル」の看護師、中島美華さんは「家族だけで全てをするのは本当に大変です。私にできる支援で、家族の手を少しでも離れる時間を作れたらと思います」と話す。在宅レスパイトは6月から、新たに2事業所が支援に加わった。

◇諦めなくてよい環境
洋子さんは今後を見据え、本年度から専門学校に通い始めた。医療的ケア児等コーディネーターらに相談しながら、各関係機関が方法を考え、実現したチャレンジだった。「医療的ケアと週6日の仕事
専門学校とで大変ですが、皆さんの応援があるのでがんばれています」。
医療的ケア児との暮らしを、いつも走っているような感覚だと表現する洋子さん。圭太さんとの生活を思い返し、今後の支援への切実な思いを語る。「フルタイムで働くことや、きょうだいとの時間を、家族が諦めなくてよいように、支援がもっと充実していくと良いですね」。
困りごとや悩みに寄り添って、必要な支援と結び付けることで増える、医療的ケア児と家族の「できる」。家族が安心して平塚で暮らせるように、「もっと早く知りたかった」とならないように、支援ネットワークづくりは続く。

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