■初めて!箱根中学校の生徒による植栽を実施しました!
町では平成19年度から水源の森林づくり制度を活用した、豊かな森林づくり事業で混交林化を目指し、毎年、間伐を行った場所に広葉樹苗の植栽を実施してきました。
これまでの広葉樹苗の植栽は、春と秋の年に2回、町民やボランティア団体などの方々に植栽作業を体験していただき、町が進める水源かん養機能に着目した豊かな森林づくり事業について理解を深めていただくことを目的として行ってきました。
今回は先人たちの努力によって守られてきた、箱根の豊かで美しく魅力ある景観をどうやって守り、持続可能な景観にするか。そのための方法を知ってもらうため、かながわトラストみどり財団のインストラクター協力のもと、箱根の未来を担う箱根中学校の生徒に植栽をしてもらいました。
この特集では箱根の景観の大部分を占める森林がどのように管理され、守られているか、植栽を通して考えていきます。
◇森林の水源かん養機能とは
森林は我々の生活と環境に欠かせない役割を果たしており、(1)水資源の貯留(2)洪水の緩和(3)水質の浄化など、多岐にわたる機能が備わっています。
雨水の川への流出を調整し、美味しい水を供給することで、私たちの生活に清新な息吹をもたらします。また、森林は土砂の流出や崩壊を抑制し、水供給において不可欠なダムの堆砂をも防ぎます。
この豊かな森林等の整備により、台風19号の被害が最小限に抑えられました。
◇混交林とは
広葉樹と針葉樹とが混生する森林のことで、
(1)混生することで木の種類が豊富になり、季節ごとに変化が楽しめる。
(2)広葉樹と針葉樹は木の成長スピードが違うため、伐採する木の種類ごとにタイミングを合わせやすくなるので計画的に伐採ができる。
といったメリットがあります。
◇箱根町の森林面積は
箱根町の森林面積は6,973haで、神奈川県内では山北町、相模原市に次ぐ森林を保有しています。
町の75%が森林で、東京ドーム約1,491個分もあります。この広大な森林が箱根町の美しい景観を作り上げています。
◇かながわトラストみどり財団について
都市近郊の身近なみどりから、水源林など山地のみどりまで、生活環境から水源環境の保全など、皆さんとともに神奈川のみどりを守り育てる運動を推進しています。今回植栽にあたり、植栽の仕方はもちろん、森林の働きなどを詳しく説明してもらい、植栽の重要性について伝えていただきました。
◇今回の取り組みはSDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」に繋がります。
■箱根の森林を守る3つのポイント
[Point1]箱根の未来を植える
[Point2]健全に育てるため間伐を行う
[Point3]木材を有効に活用する
◇[Point1]箱根の未来を植える
日本では昭和10年代に戦争拡大に伴い軍需物資などで大量の木材が必要となり、大量伐採の結果、昭和20年~30年代に各地で発生した台風等による大規模な山地災害や水害が発生しました。
こうした中、昭和26年に森林法が制定され現在まで森林管理がされてきました。森林法が制定されてから植栽は天皇皇后両陛下のご臨席のもと「全国植樹祭」が行われてきたことを筆頭に「国民運動」として続けてきた歴史があります。森林管理には、植栽を含めた、下刈り、枝打ち、除伐、間伐などさまざまな工程がありますが、この中でも、比較的危険度が低い植栽は、誰でも参加しやすい作業となっています。今回、森林管理の第一歩として箱根中学校の生徒に植栽を行ってもらいました。植栽した「木」の成長に希望を託し、持続可能な箱根町の景観とするために、植栽を通して森林管理について学んでもらいました。
《植栽をした中学生の声》
今回は、一年生約40名が参加しましたが、全員が初めての「植栽体験」となりました。
体験した生徒からは、「楽しかった」や「大人になったら植えた木がどのくらい成長するのか楽しみ」といった声があり、植栽を楽しみながらも、森林管理の大切さを感じている様子でした。
▽5Gと記載され、苗木につるされたプレート
植栽した苗木に、班ごとで考えたさまざまな想いを記載したプレートを付けました。第1班では、5名でグループを構成していることから「5人で1つのグリーン(G)を生み出す」=「5G」と記載したプレートを付けました。
◇[Point2]健全に育てるため間伐を行う
《木の伐採は森林破壊!?》
森林の伐採と聞くと、違法伐採や森林破壊などを連想する方も少なくないはずです。森林破壊はただ森林が失われるだけでなく、動植物などの生態系や人間の生活にも影響を及ぼします。しかし、森林を適切に管理し、必要な手入れを行わないと、森林が劣化し土砂崩れの原因となることや、新しい木が植えられないため、今ある木が高齢となり、二酸化炭素の吸収量が低下するなど、森林の機能が低下してしまいます。
そのため、森林を適切に手入れすることは持続可能な森林を実現するために必要な行為となります。
町では主に、仙石原片平(せんごくはらかたひら)地区、お玉(たま)が池(いけ)地区、畑引山(はたびきやま)地区の町有林で間伐を行い、景観の形成と共に適正な管理を行っています。
また、自然が豊かである当町は、野生動物も多く生息しています。健全な森林は、野生動物が住みやすい環境づくりにもつながるなどの側面もあります。
※詳細は、本紙P.5をご覧ください。
◇[Point3]木材を有効に活用する
木材は建築などに欠かせない材料ですが、これまで安価で大量に輸入ができる外国産木材が日本では多く使用されてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国産木材の価格高騰や供給不足(ウッドショック)が生じたことで、国産木材に注目が集まっており、木材の有効活用についても注目されています。町でも、間伐した木材を木材市場へ売却したり、ハイキングコースの補修に使用するなど、木材の循環利用を行っています。もしかしたら、あなたの家で使用されている木材は箱根産の木材なのかもしれません。
◇まとめ
箱根町の魅力の一つである雄大な自然は「おのずと」形成されてきた訳ではなく、先人による適切な管理のもと魅力ある景観が形成されています。
今回の植栽体験が箱根中の生徒たちにとって森林の大切さを考える良いきっかけとなり、この先も森林を守り育てていって欲しいと思います。特集/終
■令和6年、森林環境税が始まります。
国内に住所を有する個人に対して課税される国税で、年間1,000円が個人住民税と併せて徴収されます。この税金は、この特集で紹介しているような、森林整備やその促進に充てられます。
町ではナラ枯れ対策などに活用していきます。
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