■「国指定重要無形民俗文化財 豊前神楽」
土屋神楽講
土屋神楽講 会長 宮房宏 様
◇復興 町の伝統文化
平成3年に50年間も途絶えた土屋神楽を復興させようと同じ志をもった知人2人で白紙の状態から神楽を学びます。「すごい大変やった。人数も集まらないし正直やめようと思った。本当に悩んでいた時に当時の古表神社の宮司から『本当に土屋神楽を復興したいのなら人数が少なくても舞ってみなさい』と後押しされてね」そう話す宮房会長。成恒神楽で修行をして3年。その後、父(元行員)からも修行を受け、古表神社での夏祭りで土屋神楽講として旗揚げをし、その後、地元壷神社の秋祭りを経て吉富町指定無形民俗文化財に認定されました。「復興したとはいえ、先輩たちの記憶を頼るしかなくてね。お囃子の笛もその一つ。調べていくうちにだんだん」蛎瀬神楽(大分県中津市)と音色が似ていることが分かり、団体が練習しているのを録音させてもらい、この音でいいか当時のお囃子保存会の方に聞いて確認してもらい、後は一つ一つ笛で音を出しながら少しずつアレンジを加えていきました。」
取材をさせていただいた宮房さんの自宅の敷地に練習場があり神棚には2つのお面が丁寧に飾られています。そのうちの1つは江戸時代から使われていたという古いお面です。「土屋区の公民館を掃除していたら、このお面が出てきてね。復興するのをずっと待っていたんだろうな…」これからもこの大切な伝統文化を後世に残していきたいと話していただいた土屋神楽では、現在、町のキッズクラブなどと20年以上も連携し小学生をふくめた9人で活動をしています。「今後も江戸時代から始まった豊前地方では最も古いといわれている土屋神楽をずっと残していきたい・・・子ども達が大人になって後世に継承してくれると嬉しい。」と宮房さん。神楽にかける未来への強い想いも伝わりました。
≪神楽豆知識≫
綱・藁蛇[つな・わらへび]
綱御先の綱は蛇を表しているとされ、紅白等の布縄で紙垂が挟み込まれているものや、藁蛇が使われる。
また、大蛇退治の大蛇には藁製の他に、蛇頭に布胴の蛇や既製の造り物が使用される。
■「国指定重要無形民俗文化財 豊前神楽」
吉富神楽講
吉富神楽講 会長 中島日出雄 様
◇30年間の想い 人を喜ばせたい
◇神楽が大好きやった・・・「子どものころから地域の神楽を見て育ってね。神楽が大好きやったから自分も大きくなったら舞ってみたいなと思っていた。」地元の広津下区で神楽好きの仲間と平成5年に結成し、6年間の修行を終え、旗揚げをしたのは平成11年のことでした。「初めて人前で舞った時、爽快感があって、これはやめられないなと。あの時の気持ちはわすれられんね」以来、吉富町内の昭和区や今吉区をはじめ、毎年10ヵ所以上の神楽奉納を行っています。
現在17名で半数が20代〜40代前半という若い世代で構成されています。吉富神楽は京築神楽のなかでも最も新しい神楽ですが、勇壮で見応えのある舞いを心がけ、日々修練を重ねています。「見に来てくれる皆さんに、感動してもらいたい。何より笑顔で楽しいと感じてほしいです。」そう話してくれる中島さんはメンバーが自分達で「やってみたい」ということをなるべく取り入れやっているとのこと。同じものを何回もすると面白味がなくなるからなるべく新しいことをやるようにしています。「ありがたいことに吉富神楽をきっかけに、はるばる遠方からも吉富町に来てくれる人もいてね。昔から若い人が〝追っかけ〞のような感じで常連のように見に来てくれるね。」25年以上も神楽を続けられているのは、〝いい仲間にめぐり会えたこと〞と中島さんは仲間との楽しいエピソードを沢山話してくれました。
最後に「中島さんにとって神楽とは?」と質問してみました。「大変なこともあったけど、一言でいうなら〝いきがい〞やな」と取材には最後まで優しい笑顔で応じてくれました。これからも長く神楽を続けていってもらいたいです。
≪神楽豆知識≫
湯立神楽[ゆだてかぐら]
湯立神楽は、神社の境内等に斎庭を設営して行われる。斎庭場を清める舞、陰と陽(天と地)の融合・交合、五行の輪廻を祈る御先神楽、四方を祓い清め、穢れを取り除くための神随神楽、火と水の融合を祈る火鎮神楽に分けられる。湯立神楽は、いたるところに陰と陽(天と地)の調和・融合・交合を祈り、順調な五行の循環を祈る場面があり、大規模な祈祷色の強い神楽である。吉富町では、10月12日(土)に小犬丸上区で6年ぶりに湯立神楽を行います。
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