■青銅鏡に見える龍 ―宮ノ本12号墳出土の獣帯鏡―
令和6年、本年の干支は辰(龍)です。今回は龍に関連する資料として宮ノ本12号墳から出土した青銅鏡について紹介します。宮ノ本12号墳は、佐野地区でおこなわれた土地区画整理事業によって発掘調査された古墳時代前期(約1千800年前)の円墳です。ここから獣帯鏡(じゅうたいきょう)という、鏡の背面に方角を司る四神(しじん)や霊獣(れいじゅう)、仙人の文様を配した鏡が見つかりました。
文様を中心に観察してみると、鏡の縁あたりには流れる雲が表現されています。その内側には乳(にゅう)という小さな突起に4つの葉が表現されたものが6つ等間隔に配置され、その間には四神と呼ばれる伝説の動物たちが浮き彫りされています。このうち、中央下に見える鳥が南を司る朱雀(すざく)。その対面に見える亀(かめ)と蛇(へび)が一体となったものが北の玄武(げんぶ)。その右隣には西の白虎(びゃっこ)。白虎の対面には東を司る青龍(せいりゅう)が表現されています。
解説すると龍とは古くは中国で信じられた想像上の動物で、頭には角を持ち蛇のような長い体に、背にはたてがみが生え、四肢(しし)がついた体を持ちます。また、水中に住んでおり、時には空を飛ぶことができ、仙人の乗り物とされています。その神霊視された動物はやがて方角を象徴する存在となり、鏡や古墳の壁画などにみられるようになります。
宮ノ本12号墳の鏡に見える青龍は、顔は錆(さび)でややわかりにくいものの、頭には角は見られず、口を開いているようです。長い首は曲げて、続く体からは前足を前方に突き出しています。後ろ足は太く、がっしりした足には指先まで表現されているほか、踵(かかと)あたりには反り返る毛が見えます。背中にはたてがみは見えません。体は一見、哺乳動物のように見えますが、蛇のようにくねらせて、とても長いしっぽを加えることで想像上の動物を表現しています。よく観察してみると、私たちがイラストなどで目にする龍とは姿が違うことがわかると思います。
この獣帯鏡は中国で作られたもので、海を渡り古墳時代の佐野地域を治めていた有力者のもとに辿り着きました。当時の人々には、鏡に配された文様の意味が伝わっていたのかはわかりませんが、その図はとても新鮮に映ったことでしょう。この獣帯鏡については市指定文化財に指定されています。また、この地に龍のイメージが伝わった例を示すとても重要な文化財です。
文化財課 中村 茂央(なかむら しげお)
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