■広川町にある巨樹・珍樹その2
六田区にある浄徳寺の境内に、直幹(ちょくかん)の伸びが見事で、ほかを圧倒するようなチシャノキが聳(そび)えています。
推定樹高 30.0メートル
幹周 1.9メートル
を測りますが、樹齢についての推定はできていません。
チシャノキは、家具材としての用途のほかには、コケシや将棋(しょうぎ)の駒(こま)材としての利用があるとのこと。
チシャノキという名前がまず興味を引きます。物の本によりますと、どうやら若葉は可食(かしょく)のようで、筆者は食したことはありませんが、その味がチシャ(レタス)に似ていることによるとあります。
若葉を摘(つ)むと、葉茎(ようけい)の部分から粘性(ねんせい)のある白い樹液(じゅえき)が出ることから、ちちくさ(乳草の意)とも呼ぶようです。
カキノキダマシという別名も持っていますが、こちらは葉の形や樹皮(じゅひ)が、いわゆるカキノキによく似ていることによります。
広川町制50周年を記念して刊行された『広川町史』(平成17年)の調査の過程で、チシャノキに関して気になる事があったのですが、未解決のままでした。
ごく最近になって、仏教とも無関係ではないということに気づきました。仏教思想を取り入れた庭園に植えられる理由も、チシャは智者(ちしゃ)と語呂(ごろ)が通じることと理解します。
そう思って町内を見てみますと、寺院の近くではチシャノキを見かけることが少なくない理由も解(と)けそうです。
歌舞伎(かぶき)の有名な外題(げだい)に、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)がありますが、その中でもチシャノキが登場します。古くから何かにつけてよく知られた、身近な樹木であったことは間違いないでしょう。
近隣では八女市山内の素戔嗚(スサノオ)神社に、福岡県指定天然記念物のチシャノキ(宮(みや)のチシャ)があり、
樹高 12.0メートル
幹周 4.0メートル
を測ります。
浄徳寺にあるチシャノキは幹周こそその約半分ですが、折損(せきそん)も無く真っすぐ高く聳える姿は、県指定木に比しても見劣りしません。
■広川町古墳資料館だより
町内の遺跡で出土した土器は、広川町役場西側別棟の埋蔵文化財整理室(まいぞうぶんかざいせいりしつ)で復元しています。
地中に埋まっている土器は、土の重みでバラバラの破片になっているものが多く、これらをパズルのように組み合わせます。
どうしても破片が見つからない部分は、石膏(せっこう)で欠けた部分を補修しており、熟練した作業員の手により古代の土器がよみがえっています。
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