平成17(2005)年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」から、19年がたちました。市は、地震の記憶と経験を風化させないため、3月20日を「市民防災の日」と定めています。1月には能登半島地震が起きました。改めて過去の経験を振り返り、地震への備えを確認します。
19年前の春分の日、午前10時53分に福岡県北西沖を震源とするマグニチュード7.0の福岡県西方沖地震が発生しました。この地震で、ブロック塀の倒壊によって1人が亡くなり、家屋の倒壊や落下物によるけが、熱湯によるやけどなど、千人以上が負傷しました。
震源に近かった西区玄界島をはじめ、湾岸地域の被害が大きく、住宅被害は市内全域で5200棟以上、漁港や港湾、道路などにも大きな被害が出ました。
玄界島は、市内中心部から北西約20キロメートル沖にあり、博多湾と玄界灘の境に浮かぶ外周4キロメートルの小さな島です。玄界校区自治協議会・井上公加(きみかず)会長(69)と市漁業協同組合玄界島支所の松田武治会長(71)に、震災を振り返ってもらいました。
―玄界島での被災当時のことを教えてください。
井上:地震の時は、市営渡船の船長として海の上にいました。波の揺れとは違う突き上げるような大きな揺れに、ただごとではないことを認識しました。島に戻ると多くの家屋が倒壊し、のどかで元気な島の風景が一変していました。
松田:私も漁船でただならぬ揺れを感じ、急いで港に戻りました。家にいた家族は、ゴーッという地鳴りのような音が近づいてきて突然揺れ始め、たんすや棚が倒れて、つぶれかけた家の中で死を覚悟したと言います。島民は、皆顔なじみです。誰が避難所に来ていないか、すぐに分かります。手分けして不明者を探しに行き、大きな余震が来る前に倒壊寸前の家屋の中から救助できました。若い人たちが、高齢者やけが人をおんぶして避難所まで連れて行きました。
―震災を経て思うことはどんなことですか。
井上:島全体が壊滅的な状況の中、全員の生存が確認できました。島民は、学校を卒業したら水上消防団に所属し、水難救助などの訓練をします。もちろん私たちも経験者です。自然に体が動いたのは、昔からの備えがあったからだと思います。昼ごろには炊き出しが始まり、島で活動する八つの団体が協力して、救助隊が到着するまで島民全員で乗り切りました。
松田:地震当日の夕方から九電記念体育館への避難を開始し、その日のうちに全員避難を終えました。われわれ役員は、安全を守るために島に残り、海辺にある漁協に1カ月間寝泊まりして復興への準備を始めました。平成20年に全島民が帰島し、子どもたちの声が久しぶりに島に響いた時のことを、今でも鮮明に覚えています。学んだことは「災害はある」そして「突然起こる」ということです。災害が発生したら、自分たちで動き始めなければなりません。いざという時、自分が何をすればよいか、自分に何ができるのかを、あらかじめ考えておいてください。
▽いつ起こるか分からない地震に対応するために
九州大学アジア防災研究センター・三谷泰浩教授(58)の話
地震が起きたら、まずは自分の命を守ってください。生き延びるための行動が大切です。家屋の状況や年齢、体の状態など、災害リスクはそれぞれ異なります。災害発生時にどうすればよいか、一人一人、事前に考えておく必要があります。
発生からしばらくは、自分たちで乗り切らなければなりません。それには、日頃からの地域のつながりが不可欠です。地域の祭りや防災訓練などの行事に、積極的に参加してください。
被災した後、元の状態に戻るまでには、多くの時間と労力がかかります。回復力やしなやかさを意味する「レジリエンス」は、防災においても重要です。普段から、人との関わりの中で頼り頼られる関係が築けていれば、いざという時に大きな支えになります。ボランティアや駆け付けてくれた友人たちも力になってくれるでしょう。
被害を最小限にするためには、あらかじめ備えておく「減災」も大事な要素です。自分や大切な人の命を守るために、災害を他人事ではなく自分事として捉え、常に危機意識を持って備えておきましょう。
問い合わせ先:地域防災課
【電話】092-711-4156【FAX】092-733-5861
◆地震が発生したら
▽発生時
・机の下などにもぐり、姿勢を低くして頭部を守る
・倒れてくる物や落ちてくる物に注意して身の安全を確保する
▽発生直後
・家族の安全を確認する
・けがをしないように靴を履く
・火の元を確認する
・ドアや窓を開けて出口を確保する
▽発生後
・持ち出し品を確認する
・ラジオなどで情報を収集する
・家を出る前にガスの元栓を閉め、ブレーカーを切る
・避難するときは車を使わない
・高齢者や乳幼児がいる家庭など、近隣の住民に声を掛ける
詳細は、市ホームページ(「福岡市 地震発生時の行動」で検索)で確認を。
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