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自治体の皆さまへ

大切な人の笑顔を守るために 認知症ケアにユマニチュードを

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福岡県福岡市 クリエイティブ・コモンズ

ユマニチュード(マルアール)は、認知症など介護を必要とする人とコミュニケーションを取るためのケア技法です。介護する側される側、双方が毎日を心豊かに過ごすために必要な気付きを与えてくれます。

市は、認知症になっても住み慣れた地域で、自分らしく暮らせるまち「認知症フレンドリーシティ」を目指し、全国に先駆けて平成30(2018)年からユマニチュードの普及・促進を行っています。
ユマニチュードは、「人間らしくある」という意味を持つフランス語の造語で、その人の持っている力を引き出し、最期の日まで「その人がその人らしくいられる」ように考案されました。
認知症は、誰の身にも起こりうる脳の病気で、記憶や判断力等の認知機能が低下し、社会生活に支障を来す状態をいいます。認知症になると、何度も同じ事を尋ねたり、体に触れられる事を嫌がったり、暴力的になったりすることがあり、介護の現場では、「どう接したらよいのか分からない」という声も聞かれます。

■あなたは大切な存在です
ユマニチュードは、四つの基本技術・見る・話す・触れる・立つを柱に、「あなたを大切に思っています」と伝えるための技術と、「なぜそれを行うのか」という考え方(哲学)からできています。これらを組み合わせて、相手が理解できるように伝えることで、良い関係を築くことができます。
介護している人の優しさを届けるには、ちょっとしたこつがあります。それは誰にでもできることです。大切な友人と楽しい時間を過ごすような感覚で実践してみてください。

▽ユマニチュードを実践している城南区の大津省一さん(81)に話を聞きました。
認知症の妻を介護しています。私もユマニチュードに出会う前は、自分が正しいと思うことを押し付けて、妻に腕を噛(か)まれることもありました。
認知症は病気です。本人は何も悪くありません。自分が変わる必要があると思い、妻を連れてユマニチュードの講座を受けました。それからは、お互い少しずつ笑顔が増えていきました。全てを受け止められるようになり「いてくれてありがとう」と思えるようになりました。
妻の歩調に合わせ、手をつないで散歩をしていると「今が一番幸せよ」と言ってくれます。一緒に歩いていると、きれいな月が出ていたり足元には草花が咲いていたり、たくさんの幸せに気付かせてくれました。
時々、「どなたですか?」と忘れられることもありますが、そんな時は他人のふりをしてその場から離れ、何事もなかったように「戻ったよ」というと「さっき知らない人が来てたのよ」と教えてくれます。
ユマニチュードは、愛を伝える技術です。今、穏やかな時間を妻と過ごせることが何より幸せです。今夜も、手をつないで眠ります。

▽ユマニチュード四つの柱
・見る…相手にできるだけ正面から近づいて、同じ目の高さで水平に見つめる。しっかり相手の視界に入るように配慮する。
・話す…穏やかな低めの声で、ゆっくり話す。相手に反応がなくても無言にならず、前向きな言葉で話し掛けながら介護を行う。
・触れる…急に腕などをつかまれると恐怖を感じることがあるため、下から支えるように広い面積でゆっくり触れて安心感を与える。
・立つ…1日合計20分間立つことができれば寝たきりを防ぎ立つ力を保てるため、歯磨きやトイレなど可能な限り立つ援助をする。

問い合わせ先:ユマニチュード推進課
【電話】092-707-3117【FAX】092-733-5587

◆情報が伝わるようにするための六つのヒント
▽会いに行くときは必ずノック
部屋に入る時は、音で予告します。「あなたの空間と時間を尊重しています」ということを伝えるための技術です。ふすまや障子でも同様に行います。

▽いきなり用件を切り出さない
介護をする時は、いきなり用件を切り出さず、あいさつやたわいない会話で始めましょう。毎日続けていると、だんだん関係が良くなり介護を受け入れてもらいやすくなります。

▽返事を3秒待つ
認知症になると、情報を分析して理解するまでに時間がかかります。何か質問したら、3秒程度返事を待ちましょう。待つことも大切な技術です。

▽正面から近づく
認知症の人は、視野の外から声を掛けられても自分のことだと気付きません。正面から近づいて相手の視線に入り「ここにいますよ」と伝えます。

▽何度も同じことを尋ねるときは楽しい気分に切り替える
何度も同じ質問をしてくるのは、不安な気持ちの表れかもしれません。質問と関連がある楽しいことを提案することも解決策になります。

▽「見る」「話す」「触れる」が伝えるメッセージを一致させる
優しく話していても横から強く腕をつかんでしまっては、相手を混乱させてしまいます。私たちの伝え方に矛盾がないように、メッセージを一致させましょう。

◆認知症当事者のノブ子さん(76)の話
認知症になった今でも、週に1回、2時間楽しく仕事をしています。皆さん、認知症だからって、気を遣い過ぎないでください。
たまたま認知症になりましたが、私たちにもできることはたくさんあります。もたもたするかもしれませんが、助けが必要になるまで気長に待っていてくださいませんか?
認知症になると感受性が豊かになるのか、ほんの小さな出来事でも、大きな喜びに変わります。これからも外の世界に目を向けて、積極的に人と関わりたいと思います。

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