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芦屋歴史紀行 その三百四十

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福岡県芦屋町

■芦屋歴史の里移転開館20周年記念特別展「妖怪!百鬼夜行~海にひそむ もののけたち~」より(3)
前回に引き続き、芦屋にゆかりのある妖怪を紹介します。

◇天狗(てんぐ)
現代の私たちが思い浮かべる天狗像が生まれたのは、平安時代中期以降です。その頃に書かれた「物語」には、山中の妖(あや)しい音を天狗の仕業とする記述があり、この時期にはすでに山中に住む怪(かい)としての天狗が成立していたことが分かります。初期の天狗の正体は、糞鳶(くそとび)とされ、後に嘴(くちばし)のある烏天狗(からすてんぐ)の原型となりました。
一方、赤ら顔で長い鼻を持つ鼻高天狗(はなだかてんぐ)が成立するのは13世紀頃です。天狗のイメージは、山伏(やまぶし)や修験者(しゅげんしゃ)と呼ばれた山岳(さんがく)宗教者でした。音の怪、山中(さんちゅう)の怪、荒事(あらごと)を好み、呪言(じゅごん)をよくするという天狗の特徴は、これら全ての特徴が絡み合ってできあがりました。同時に道を踏み外した僧侶が死後天狗になるとする説もあります。今でも調子に乗りすぎることを「天狗になる」と言います。
今回の妖怪展では、俗称「天狗の爪」を展示しています。標本名は、カルカロドン・メガロドンの歯化石(しかせき)です。芦屋町山鹿の岩盤地帯で発見されました。これは約3千万年前に生息していた全長数十mにおよぶ巨大な古代鮫(こだいざめ)の化石です。天狗は日本古来の大物妖怪です。当時は正体不明の鋭い鮫の歯化石をみて、恐ろしい天狗様の爪を連想したのでしょう。岩手県平泉(ひらいずみ)の中尊寺(ちゅうそんじ)、神奈川県藤沢(ふじさわ)の遊行寺(ゆぎょうじ)などでは、寺宝(じほう)として大切に伝えられています。

◇キツネ
全国にはお稲荷(いなり)さんと呼ばれ、身近な信仰対象である神社が多く存在します。しかし、お稲荷さんのご本尊はキツネではありません。宇迦之御魂神(うかのみたましん)という神で、キツネは本来その御使いなのです。野山にいるキツネと違って我々の眼には見えません。そのため、神聖な狐「白狐(びゃっこ)さん」として崇(あが)めました。
日本各地には、いたずらキツネに化かされた話が数多く残されています。ここ、芦屋にもキツネに化かされた話が、活字化されたものだけでも4編残されています。そのいずれもが芦屋と岡垣の間に広がっていた、三里松原(さんりまつばら)を舞台としています。さらにそのキツネたちを慈(いつく)しむ行事が芦屋にありました。

◇三里松原の寒施行(かんせぎょう)
大雪の夜、握り飯と油揚げをお稲荷様の御使いというキツネに供え、供養した芦屋の年中行事がありました。芦屋町内各区から老若が集まり、口々に「カンセギョウ」と叫びながら、松原のあちこちに竹の皮を敷き、握り飯と油揚げを置いて回りました。いずれもキツネの好物と伝えられるものです。この思いやりに満ちた風習は、三里松原を開拓しての飛行場の新設などによって途絶えました。
この他にも妖怪やアヤカシの話が芦屋町には多く伝わっています。ぜひ、歴史の里の「妖怪展」で不思議な世界をのぞいてみてください。

特別協力:船の科学館「海の学び ミュージアムサポート」

(芦屋歴史の里)

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