文字は、人類最大の発明の一つと言われています。その文字を罫線も何もない真っ白な紙に、筆と墨を用いて自分の感性や想いで表現する「書道」。
ある書道家は、一発勝負で書きあげ、ある書道家は納得がいくまで何百、何千枚と書き続けます。
そうして完成した一枚の書には、作者ごとに特別な想いが込められ、見る人を魅了する力があります。
書道の大きな特徴の一つとして、年齢や性別を問わず、子どもからお年寄りまで幅広い年代で楽しむことができます。
その書道の舞台で輝く人たちがいわきにもたくさんいます。
そうした方たちが積み上げてきたたゆまなき研鑽の証である作品に「光」を当てるため、一生懸命応援している人たちがいます。
本特集では、11月23日から26日まで市文化センターで開催された「市書道展・市中学校書道展」の実行委員長である鹿中剛志氏のインタビューを交えながら書道の魅力についてお伝えします。
■想いを筆にのせて
◇市書道展・市中学校書道展
本展では、4歳から91歳までの市民の皆さんの作品計456点が展示されました。
市中学校書道展では、最高賞である撫順(ぶじゅん)市長賞に奥藤凛さん(小名浜二2年)、市長賞に阿久津吏陸さん(湯本一2年)が選ばれました。
また、市中学校長会長賞は、岡田愛唯さん(磐崎3年)、市中学校教育研究会長賞は佐久間心暖さん(湯本一3年)、市書道教室連盟会会長賞は遠藤知胡さん(中央台北3年)が選ばれました。
展示会期間中には、作品の展示のほか特別企画として、書道リレー・揮毫大会や書道対決が開催され、大筆を器用に使いながら子どもたちは真剣な眼差しで、時に笑顔を見せながら書道を楽しんでいました。
・奥藤 凛さん
撫順市長賞の受賞を聞いた時は信じられませんでしたが、とても嬉しかったです。
これもご指導してくださる先生と切磋琢磨し合える仲間がいるおかげだと思っています。
書は奥深いです。これからも、いろいろな書体に挑戦していきたいと思います。
◇書道の魅力
実行委員長(市書道教室連盟会会長)
鹿中 剛志さん
書道の一番の魅力は、何といっても「創造性」が育まれることです。正解はありません。自分の想いを筆にのせて、型にはまらない世界にたった一枚の自分だけの書を作れるのが醍醐味(だいごみ)です。
年齢を重ねると創造性も変化し、趣のある書がまた一つ生まれます。
このような多くの魅力を持つ書道ですが、新型コロナの影響によって書を披露する機会が失われてしまいました。これを受け、一生懸命書に向き合っている方たちに、なんとか光が当たる場を設けたいと思い、2020年に第一回目を開催し、今回が4回目となります。
書道に限らず、単純に頑張った人に頑張ったねと言ってもらえる世の中、これが私の願いです。
書道を通し、創造性を育み、豊かな心を持つ方が増えれば、大げさかもしれませんが豊かなまちの実現にも近づきます。
書道にはそんな魔法のような力があると私は信じています。
◇創造性を働かせて
4日間の書道展を通して、多くの書を拝見しましたが、どれも独創的で引き付けられる作品ばかりでした。
書道を通して得られることは数多く、観察すること、他者に学ぶこと、実践を通して得られること、全てのことに感謝すること…その先に豊かな創造性が広がる。そんなことを感じさせてくれる時間でした。
書を見る側においても、創造性を働かせることで作者の想いや背景をいか様にも感じることができる、これも書道の魅力の一つです。
活字離れが広がりつつある昨今、あえて筆を手に取り、想いのままに書と向き合うことは贅沢な時間なのかもしれません。
※撫順市…中国の東北地区に位置し、昭和57年(1982)4月に本市と友好都市を締結
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