■眼サルコイドーシス
サルコイドーシスは肺や目、リンパ節、皮膚、心臓などの臓器に小さな肉芽腫(しこり)ができる疾患です。原因は不明ですが、何らかの病原微生物の感染をきっかけとして免疫が過剰に反応することで発症すると考えられています。発症年齢は20~30歳代と60歳代に多く、特に50歳以降は女性に多くみられます。診断には全身の各種検査が必要になりますが、特にツベルクリン反応が陰性化することが多く、重要な所見となります。
目の病変は肺に次いで多くみられ、ぶどう膜炎や網膜の血管炎を起こし、かすみ、まぶしさ、充血、飛蚊症などの症状が生じ、眼サルコイドーシスと呼ばれます。炎症が強かったり長引いたりすると眼底の黄斑部の腫れや緑内障や白内障などを合併して著しい視力低下の原因となります。
治療には、ぶどう膜炎を抑えるための副腎皮質ステロイドの点眼、虹彩の癒着を防ぐための散瞳薬の点眼を行い、眼底の炎症や硝子体の濁りがある場合には副腎皮質ステロイドの内服が必要になります。薬の量を減らすと再発することもあり、また炎症が慢性化することも多いため、自覚症状がなくなっても定期的な眼科通院が必要です。
サルコイドーシスは、目の症状をきっかけに見つかることも多い疾患です。かすみ目や充血などの症状でも市販薬に頼るようなことなく、眼科で診断を受けることをお勧めします。
■けんこうQandA 放射線治療(5)
Q:肺がんの放射線治療について教えて下さい。
(その(2) 小細胞肺がん、定位放射線治療)
A:「小細胞肺がん」では手術はあまり行われません。病気の広がりが肺の近くのリンパ節までなら、放射線治療と抗がん剤で治療します。
体調が良ければ、抗がん剤は放射線治療と同時に投与し、1日2回、朝と夕方に放射線治療を行います。放射線治療は土日を除く15日間行い、抗がん剤は3~4週おきに4回行います。この病気は脳に転移することが多いため、予防的に脳にも放射線治療を行うことがあります。副作用には、治療部位の皮膚炎、食道炎、白血球減少、食欲低下などがあります。治療後は肺炎を起こすことがあり、注意が必要です。
肺がんの種類に関係なく、高齢や他の病気があるために手術や抗がん剤治療ができないことがあります。その場合、放射線治療を行うことがあります。
また、ピンポン玉ほどの大きさまでのがんでは、病巣のみをねらって放射線をあてる「定位放射線治療」が行われています。この治療は、数回の外来通院で治療を終えることができ、体への負担が少なく、治療効果も良好なことが報告されています。
■乳腺外科(5)
ー乳がん放射線治療の実際ー
前回、乳がんの手術療法について説明しました。今回は、放射線治療について解説します。現代の乳がんの放射線治療は、「スペクトラム理論」に基づいています。これは、「乳がんには、『初めて発見された時(初発時)にすでに全身転移しているケース』と『段階的に病変が広がるケース』が混在している」という理論です。後者の「段階的に病変が広がる可能性」に基づき、手術を補完する局所治療として、放射線治療が実施されるわけです。
初発時の放射線療法は、乳房とその周囲のリンパ節に起こる「局所・領域リンパ節再発」の抑制が主な目的です。乳房部分切除後や、再発リスクの高い乳房全切除後の症例が対象となります。再発リスクが高いほど放射線療法の効果が高く、局所制御(照射部位の抗腫瘍効果)は長期生存率に影響します。
一方で、再発治療では、「局所再発」と「遠隔再発」に対する治療が行われます。乳房や腋窩リンパ節など局所再発では、安全性の面から、原則として、先の治療で照射されていない部位にのみ、放射線治療が実施可能です。遠隔再発では、骨転移や脳転移に対して、症状を緩和することが主目的であり、患者のQOL向上のために放射線治療を行います。
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