■地域を紡ぐ 引き継がれる地域の「文化」
安齋農園のある大平地区は、昔から養蚕の盛んな土地柄。明治40年には、総戸数360戸のうち320戸が養蚕を営んでいました。養蚕農家は少なくなったものの、地区には、養蚕にまつわる神社があったり、通学路に桑畑があったりと、今でも生活の中に蚕を感じさせてくれるものも残っています。
この地区にある大平小学校では、毎年3年生が蚕を育てる活動に取り組んでいます。この日は、安齋農園を訪問して、説明を聞きながら蚕とご対面。
初めての蚕に、触ってみたい子、苦手な子。反応はさまざまです。「かわいい」「フワフワしてる」「気持ち悪かった」といろいろな感想を話してくれました。(写真12)
「蚕ってみんな白ですか?」
「ひとつの部屋に2つの蚕が入ることはありますか?」
「蚕には、緑色や黄色、赤色の蚕もいますよ」
「2つの蚕が1つの部屋で一緒に繭を作ることは滅多にないんですよ」
子ども達の疑問は、大人の疑問とも違います。いろいろな疑問を持って、そして、質問。この日の先生、孝和さんも丁寧に答えます。
農園での学習が終わると「蚕」と「桑の葉」を学校に持ち帰ります。教室でじっくりと観察。(写真13)
蚕にごはん(桑の葉)をあげたり、排泄のお世話をしたり。そして、手作りの蔟に繭を作ってもらい、最後は蛾になるまで見届けます。
「この蛾は育てられないの?」
「なぜ、この蛾は飛ばないの?」
またまた新たな疑問が湧いてきて、みんなで調べていきます。
卒業式。6年生は3月になると卒業を迎えます。大平小学校の6年生は、胸にコサージュをつけてこの日を迎えます。(写真14)
そのコサージュは、蚕が作った繭から作られたもの。3月になると、5年生が、ひとつずつ丁寧に、心を込めてコサージュを作ります。
この30年続く地域と小学校の取り組みは、昨年、全国で2校が選ばれた「蚕糸絹文化学習教育奨励褒賞(蚕を学ぶ奨励賞)」(一般財団法人大日本蚕糸会)にも選ばれました。
生業(なりわい)としての養蚕は、地域を紡ぐ文化としても、そして、世代を紡ぐ文化としても、その役割も担っています。
※詳しくは本紙をご覧ください。
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