■適山最高傑作「蘭亭曲水図」
▽令和5年度第3回企画展 伊達市発掘調査速報展
1/20(土)〜
伊達市保原歴史文化資料館
今回は、熊坂適山(くまさかてきざん)筆による福島県指定重要文化財(絵画)「蘭亭曲水図(らんていきょくすいず)」を紹介します。
「蘭亭曲水」とは、中国の東晋(317~420年)の時代に行われた行事の一つです。永和9(353)年3月3日、「会稽山影之蘭亭(かいけいさんいんのらんてい)」に文人42人が集まり禊(みそぎ)の祭事を行い、「流觴曲水(りゅうしょうきょくすい)」という遊びを楽しみました。この故事については、王義之の「蘭亭記(らんていき)」または「蘭亭序(らんていじょ)」に詳しく記録されています。「蘭亭曲水」は画人に好まれた題材で、日本の南画家によって数多く描かれました。
「蘭亭曲水図」は、適山作品の中でも最高傑作といわれており、丁寧な筆法による細密な描写が特徴となっています。作品内では、水の流れる庭園などで盃を流し、出席者が自分の前を通り過ぎるまでに詩歌を詠(よ)み、盃の酒を飲んで次に流す「曲水の宴」の様子が描かれています。
また背景部には、「皴法(しゅんぽう)」と呼ばれる特異な画法が使われています。これは、山や土坡(傾斜地や斜面)・岩石などをひだやしわに描き、立体感や量感を表現するための東洋的陰影画法で、適山が得意としていました。
左上端に「嘉永六年(かえいろくねん)歳在癸丑春蚕月上澣写適山(てきざん)逸人」とあることから、制作時期は適山が58歳のときだったことがわかります。
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