13人の高校生が「憧れの大人」を取材
靴職人
安藤 文也(ふみや)さん
◆革靴作りに心を惹かれて
現在、小高区を拠点に靴職人として活躍する安藤さん。靴職人を志したのは、社会人として働いていた27歳の時でした。以前から好んでいた革製品の中でも、特に革靴に引かれた安藤さんは仕事を退職し、革靴を作る専門学校に入学します。靴作りは気が遠くなるようなたくさんの工程があり、その中で初めて自分で完成させた革靴を履いた時の感動は今でも忘れられないといいます。
その後ロンドンで開催された靴作りの世界大会で5位という素晴らしい結果を収めました。しかし安藤さん自身は、悔しさとともに己の未熟さを感じたといいます。現状に満足せず、靴作りに一心に向き合う姿に胸を打たれました。
◆靴作りに込められた思い
安藤さんの靴作りは完全オーダーメイドで、お客さんとの打ち合わせでデザインや素材を決めるところ:から始まります。この最初のコミュニケーションを大切にしていると話す安藤さん。そこにはお客さん一人一人の要望に応えたいという強い思いがあります。
そしてそのお客さんの存在が、時間も手間もかかる靴作りの支えとなっているといいます。安藤さんは「お客さんの思いに応えるために技術を磨く」と語ります。安藤さんが作る靴には、お客さんへの思いが詰め込まれています。
◆安藤さんの目指す靴作り
安藤さんは靴業界に身を置く中で、東北に手縫いの靴を作る工房が少ないことに気付き、いつか古里で靴作りをしたいと考えるようになりました。それこそが、南相馬にUターンして小高で靴作りに励む決断をした理由です。
「地域の発展に必要な、若い世代の移住のきっかけになりたい」と語る安藤さん。現在は近県からの注文に取り組んでいますが「いずれは全国、世界からの注文を受けたい」と話します。
◆想像力を存分に生かして
安藤さんは「私たちの想像力を良い方向に使ってほしい」と語ります。「人生を歩んでいけば、つらい事や苦しい事、理不尽な事もあるかもしれない。しかし、どんな時でも相手の気持ちや、相手が置かれた状況を想像しながら関わることで見えてくる道がある」との話から、相手の心の機微にも心を添わせることの大切さに気付かされました。
●編集後記
取材を通して、安藤さんの靴作りに対する情熱と探究心の強さに触れることができました。多くの時間と手間がかかる作業の大変さ以上に、お客さんへの思いを語っていたのが印象的でした。想像力を良い方向に生かすという考え方について、相手の気持ちや、相手が置かれた状況を想像しながら関わるからこそ得られる経験や気付きも多くあるのだと思いました。「手縫いの革靴を広く発信していきたい」と意気込む安藤さんの姿に、私も目の前にある物事に一生懸命取り組み、編集員として南相馬の魅力をもっと伝えていきたいと感じました。
-編集部員代表 原町高2年 鈴木 桜子さん
(一般社団法人あすびと福島編集協力)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>