昭和村文化財保護審議会委員長
菅家 博昭(大岐)
◆奥会津の染色産業とカラムシ畑生物相
会津田島の奥会津博物館が新しい調査報告書を刊行した。それは『会津永田の染屋・芳賀家大福帳』(南会津町教育委員会)で、江戸時代の昭和村を含む南山御蔵入領内での藍染め産業が解明された。まずこれまで知られていなかった藍染めのために必要な原料のタデアイ原料は域内で生産が行われており、形態が多様であったことが特筆される。また会津盆地産(里藍)と思われる藍葉の輸送経路も明らかになった。
明治時代はじめに南会津地域を通過した英国人女性のイザベラ・バードはその記録で、「高度な農業」と題して、インディゴ(藍)の栽培についても記録している。しかし会津坂下周辺でのタデアイ栽培については記録もあり近年まで行われていたが南会津郡内での記憶や記録はほとんど調査がなされていなかった。奥会津博物館では現在は徳島県内のタデアイ品種(ちじみ藍、千本藍)を園内で栽培されている。
また今回の調査で木灰の生産を担当している山間集落も特定された。受注により染めた色は81種類あったことも確認された。奥会津各集落から布の染め依頼もあり、その集落名も明らかとなり野尻組(現在の昭和村)の6村からの取引があることもわかった。
この調査を担当された渡部康人さんに11月21日の昭和学講座で研究成果を講演していただくこととなった。報告書は大冊で1部2千円で頒布される予定。
加えて、本年の昭和学講座のフィールドワークに参加された福島大学の水澤教子先生にも11月21日に「昭和村におけるからむし栽培と地域の生物の関係について」として講演いただくことになった。講座事務局に寄せられた先生の講演予稿では、昆虫の研究者で尾瀬の花々に訪れる昆虫の調査や、ネムノキの性表現に関する研究活動を紹介しながら、植物の繁殖生態学の研究がどういったものであるか。ネムノキは旧・喰丸小学校にも大きな株があるので、昭和村の皆さんにもなじみのある植物かと思います。後半のカラムシ畑の昆虫相については、カラムシ畑の生物相は世界的にもほとんど調べられていないという。ひとつだけ、ジャワ島のラミー(カラムシ)畑の事例が見つかったので、綿畑の調査事例と比較しながら紹介します。併せて、昭和村におけるからむし栽培が地域の生物相にどう関係しそうなのかを語られます。
本年最後の昭和学講座は2つの講演となります。11月21日の午後の昭和村公民館での開催です。是非皆さんおいで下さい。
10月8日に昭和村公民館で開催された織姫体験生30年のシンポジウムで、印象に残ったことは「残るものは残り、残すものではない。しかし徹底的な記録保存が必要」という言葉でした。警備体制等、主催された村当局含め関係機関に御礼し、無事終了したこと本年の重要行事であったことが記憶に残ります。
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