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自治体の皆さまへ

原子力のエキスパート集団~楢葉町原子力施設監視委員会~(2)

10/25

福島県楢葉町

―改めてお聞きします!―
昨年8月から始まった福島第一原発からの処理水海洋放出。
トリチウムとは?『常磐もの』は安心して食べられるの!?
素朴な疑問を、町職員から委員の皆さんに聞いてみました。

◆「私には2人の子どもがいます。子ども達が常磐ものを食べても本当に大丈夫なのか心配です。」
-くらし安全対策課 大和田 亜希子

(1)トリチウムって何ですか?
[植頭委員]
トリチウムは水素の仲間です。体の中に取り込まれたトリチウムは、体内に蓄積されずに排泄されます。例えば毎日そのトリチウムを含む魚を1年間食べたとしても、被ばくの線量の値は小さく、体への放射線による影響はそれだけ少ないということになります。

[原委員]
トリチウムと違ってセシウムは、魚にセシウムの入った餌を与えると、体内で100倍くらいまで濃縮されますが、餌を与えるのをやめた途端に体からまた出ていきます。セシウムもいつまでも蓄積するものではありませんが、多量に摂取すると体に影響があるため、水産庁は1kgあたり100Bqを超えたものは流通させないという検査体制を設けています。
現在、福島の魚は問題ないという結果になっていますが、基準値を超過したものは出荷停止となります。トリチウムのほうは、魚には蓄積しないため基準値は設定されておらず、問題視されていません。

[大越委員]
トリチウムは、空気の成分である窒素と宇宙線とが反応して生成するため、原子力施設の有無とは関係なく、地球上に広く存在しています。

(2)子どもには影響はないでしょうか?
[原委員]
これから長い時間を生きていくお子さんことをの心配する気持ちはわかります。子どものときに気をつけた方がいいというのは様々な考え方があって、例えば火傷すると傷口がひどい火傷は成長につれて傷口が広がります。また高齢者の場合は傷口が治るまで長い時間かかりますが、新陳代謝がいい子どもは早く治ってしまいます。つまり、小さな影響だとすぐ修復しますが、大きな影響だと後遺症が残りやすいのが子どものパターンと感じられます。
世の中に危険な量の放射性物質があれば心配すべきと思いますが、現在は管理されており、たとえば原子力発電所内の線量の高い建物の中に入るようなことでも無い限り、危険な量のものはありません。一般的に流通している食材は安全に管理されています。安心して摂取して良いでしょう。また、事故直後には孫が遊びに来るから福島産ではない他県産の野菜を買って、自分たちは地元の野菜を食べるというのも耳にしましたが、そのように心配する必要は全く無いと思います。
放射線は人間の遺伝子を傷つけますが、修復機能によって傷ついた遺伝子のほとんどは修復されます。大線量被ばくでは障害が起こったり死亡する可能性もありますが、日本の放射線量や食物に含まれる放射能量は国際基準と比較しても問題ない程度であって、子どもへの影響は心配には及びません。

(3)トリチウムの量は?
[岡嶋委員長]
現在、福島第一原子力発電所にはトリチウム総量で1,720兆Bq保管されてます(2022年度末時点、東電HPより)。それがすべてトリチウム水だとして試算するとおおよそ35g、すなわち30〜40cc程度です。今回の年間放出量である22兆Bqは、約0.4ccのトリチウム水に相当します。数字で見ると1年間でおちょこ1杯分にも満たない量のトリチウム水を希釈して基準値以下であることを確認後、放出し、さらに海洋で希釈されるようになっています。
期間としては、30年かけて放出する計画です。今後、要領を得て放出期間が短くなる可能性もありますし、新たにトリチウムが発生する可能性もあります。

(4)放出はやむを得なかったのでしょうか?
[原委員]
ALPS処理水の処分について、政府は5つの実施方法を検討していました。その結果、コスト面や放出後のモニタリングのしやすさ、そして影響を受ける範囲がなるべく小さく済むように、というようなことから海洋放出が選択されました。

[岡嶋委員長]
最終的には、管理も容易であることから海洋放出と結論づけられました。反対を主張する方の中には放出せずに敷地内に溜めておけばいいという方もいましたが、トリチウムは半減期が約12年と長く、120年経過して1,000分の1に減る程度です。その間、処理水を健全に保つ作業も大変なことから海洋放出という結論に至ったわけですね。

[大越委員]
セメントで固めて地上保管を勧める意見がありますが、セメントで固めると容積が増えることから、敷地の有効利用が困難になります。また、セメント固化体といってもすきまがあるため、固化体外に少しずつではありますがトリチウムは漏えいしてしまいます。

◆まとめ
・トリチウムは水素の仲間で体の中に蓄積されない。
・一般的に流通している食材(常磐ものを含む)は安全に管理されているため、安心して摂取して良い。
・ALPS処理水は、コスト面や放出後のモニタリングが容易で影響範囲が小さいことから海洋放出となった。
・同処理水は大量の海水で希釈し、トリチウムの量を基準値以下にしてから、海洋放出されることとなった。

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