■周りの人や家族の心構え
(1)自尊心を傷つけない
失敗や間違いを指摘せず、苦手になってきていることには、さりげなく自然な気遣いでサポートしましょう。
(2)できることをやってもらう
「何もできない」わけではありません。できることを生かしながら役割を担ってもらいましょう。その際、感謝の言葉も忘れずに。
(3)不安や焦りを和らげる対応を
もの忘れしたときや日時がわからないときなど、不安や焦り、孤独を感じることがあります。話を聞いて、穏やかな対応を心がけましょう。
▼家族にも支えを
認知症カフェや家族会などに参加し、話を聞いたり、自分の気持ちを話したりしてみましょう。各市町村の地域包括支援センターでは、介護・健康・福祉の専門職に相談できますよ。
■INTERVIEW 認知症でもより良く生きる
「例えば今日、取材を受けたことも明日は忘れているし、忘れないようにメモを取っても、メモをどこに置いたか忘れてしまうといった感じです」と語るのは、58歳で若年性認知症と診断された神原繁行さん。診断後は認知症であることをオープンにし、より良く生きることを大事にしてきました。「診断結果には少なからずショックを受けましたが、認知症は恥ずかしいことではないし、苦手になったことは隠さずフォローしてもらおうと思いました。ケ・セラ・セラ(なんとかなるさ)の精神で、これからの自分と楽しく付き合っていこうと思っています。いい仲間にも恵まれ、診断後も地元で暮らし続けています。とは言え、世の中では、認知症の人がその人らしく暮らし続けるには、まだまだ課題が多いのも事実。世間の考えと認知症の人の思い、そのギャップを埋め、だれもが自分らしく生きられるよう、今後も当事者として声を届けていきたいと思います」(神原さん)
今年1月、神原さんは東北6県で初めて「あきたオレンジ大使」を委嘱されました。地域に認知症の正しい知識を広め、認知症の人が希望を持って生活できるよう、イベントや交流の場で精力的に活動しています。
神原さん(右)と、神原さんの仕事や活動をサポートする同僚の佐藤昌子さん。「神原さんは私を引っ張っていってくれる存在。認知症になる前と変わらず尊敬しています」と二人三脚で当事者の声を発信している。
神原 繁行さん(60歳)/本紙写真右
横手市在住。2年前に若年性アルツハイマー型認知症の診断を受ける。医療機関で勤務を続け認知症カフェの運営に携わっているほか、認知症への理解を広げる取り組みを行っている。
▼あきたオレンジ大使(地域版希望大使)とは?
厚生労働省が任命する認知症本人大使「希望大使」の地域版で、認知症の人が、住み慣れた地域で自分らしく生きられる世の中の実現に向けた取り組みのひとつ。大使に選ばれた当事者は認知症に対する県民の理解を深めるため、自らの言葉で思いを発信し、関連の活動に無理のない範囲で従事する。
■予防のために
認知症発症のリスクを減らしたり、進行を緩やかにするための3つのカギは、食事、交流、運動です。これまで意識してこなかった人にとっては難しく感じるものもあるかもしれませんが、ストレスにならない範囲でできることから少しずつ取り入れて、健康的な生活と認知症の予防をめざしましょう。高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病予防の取り組みが認知症予防にも効果的です。
▼バランスのよい食事
1日3食、適切なエネルギー量で栄養バランスの良い食事を心がけましょう。糖質、塩分、脂質を取りすぎないことが重要です。
▼社会参加
人と関わり社会の中で役割を持つことは、認知症の予防につながります。積極的に外に出て社会活動に参加するようにしましょう。
▼運動不足の改善
運動には脳の状態を良好に保つ効果があります。ウオーキングなど、気軽に毎日続けられるものから始めてみてください。
■まとめ
令和6年1月1日に施行された「認知症基本法」では、認知症の人が尊厳と希望を持ち、認知症があっても住み慣れた地域で安心して生活できる社会の実現を目指しています。一人ひとりが「自分ごと」として考え、認知症予防に取り組むことや、認知症の人への温かい見守りで認知症の人や家族の地域での暮らしを応援しましょう。
認知症について詳しくは「美の国あきたネット」へ
この内容に関するご質問は県長寿社会課(【電話】018-860-1361)へ
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