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SDGsで共に創る持続可能な行方 第42回

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茨城県行方市

■気候変動と湖沼
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授野田 真里

1.命の水と湖沼―SDGs目標6
私たち人間そして生物の生存にとって、水は命の源です。行方市には全国第2位の面積を有する霞ヶ浦があります。茨城県全体の約3分の1の流域面積を占める霞ケ浦は、豊かな水、美しい景観や農業・漁業の恵みを提供しています(茨城県霞ケ浦環境科学センター)。
SDGsにおいては目標6で、「すべての人々のために、水および衛生施設の利用と持続可能な管理を確実にする」とされています。また、ターゲット6・6では「2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う」とされています。

2.気候変動の湖沼への影響と全循環
では、気候変動は湖沼の水環境にどのような影響をもたらすでしょうか(環境省2021)。全国の湖沼を含む公共用水域において、過去約30年間の調査の結果、大半の観測地点で水温の上昇がみられました。夏季で72%の地点、冬季では82%の地点にものぼります。気候変動は水温変化の要因の一つとして考えられています。
湖沼の持続可能な水環境において全循環は重要ですが、気候変動による水温上昇により困難になります。例えば琵琶湖北湖では、2018年、2019年と2年連続で全循環が完了しませんでした。
全循環のメカニズムは次の通りです(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)。春から夏にかけて、湖沼の水が水面から温められていくことで、湖沼の表層と湖深層との間に水温が急激に変わる水温躍層が形成されます。これにより、湖沼の深層では酸素の供給が滞ります。水温躍層にさえぎられて、表層の酸素を含んだ水が深層に循環しないためです。同時に、深層では酸素の消費も進みます。湖底の有機物の分解や生物の呼吸により酸素が消費されるためです。
通常であれば、秋から冬にかけて、表層の水温の低下に伴い、この水温躍層が弱まりながら徐々に深層に下り、湖沼の底まで到達して消滅します。これにより、湖沼の水全体がかき混ぜられて表層から底層まで酸素が供給され、水温や水質が一様になり、全循環が完了します。ところが、気候変動による水温上昇のため、この全循環のメカニズムがうまく機能しなくなり、湖沼の水質が悪化することが懸念されます。

3.今後の懸念と適応策の方針
今後の気候変動による湖沼への影響への懸念として、次の点が例としてあげられます。貧酸素による魚類の死亡、アオコの発生等による富栄養化、冷水性の魚の減少や熱帯性の外来種の増加等の例が指摘されています(図)。
これを踏まえた適応策の方針については、次のように示されています(環境省2021)。気候変動がもたらす水質変化、さらにその水質変化による、(2)魚類等生態系への影響どのような影響や、(3)人の生活や社会・経済活動への影響等の視点で適応策を考えていく必要があります。
※図は本紙参照

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