■森林とSDGs
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
1.陸の生態系と森林―SDGs目標15
私たち人間の大半は、陸上で生活しています。茨城県や行方市の主要産業である農業も陸の生態系に依存しています。SDGsでは目標15に「陸の生態系を保護・回復するとともに持続可能な利用を推進」するとあります。森林は持続可能な開発において重要であり、同目標では「持続可能な森林管理を行い、砂漠化を食い止め、土地劣化を阻止・回復し、生物多様性の損失を止める」とあります。
SDGsでは、森林に関するターゲットが多数示されています。目標15の下には、ターゲット15・1(森林の持続可能な利用)や、15・2(持続可能な営林)、15・b(持続可能な森林管理の資金)があります。また、水に関するターゲット6・6でも、森林等の生態系の保護・回復が述べられています。後述の通り、森林は気候変動、生物多様性、砂漠化、水といった、他のSDGsが取り組む課題や目標とも密接に関連しています。
2.陸地の約3割が森林―国連森林戦略計画
森林の重要性にかんがみ、国連の経済社会理事会は「国連森林戦略計画(UNSPF)2017-2030」を決議しました(ECOSOC2017)。これは、「森林および森林以外の樹木を持続的に管理経営し、森林減少および森林劣化を抑止するためのあらゆるレベルの活動に対する地球規模での枠組みを示すもの」です。
UNSPFによれば、「森林は地球の陸地面積の30%以上…人類や持続可能な開発、地球の健全性にとって必要不可欠」です。ほか、陸地面積の約25%が砂漠とされていますので、残りの約45%が農地や産業用地、市街地等と考えられます。日本の森林面積は、陸面積の67%(うち人工林40%)です。茨城県では31%(同、59%)とほぼ世界での割合に近い数値となっていますが、日本の中では千葉県の29%(同、33%)についで2番目に小さいです(林野庁2022年3月)。
3.森林のSDGsへの多角的な貢献
SDGsにおける森林の貢献は多岐に及びます(図およびUNSPF参照)。人間の経済・社会生活において森林は不可欠であり、「世界の人口の約25%に相当する約16億人の人々が、基礎食料、生計、雇用および収入を森林に依存」しています。具体的には果物、キノコ、野生動物から栄養をとり、病気の際は薬草も得ることができます(SDGs目標2、3)。また、森の恵みから所得を得ることができます(目標1)。
さらに、環境の持続可能性についても森林は不可欠です。生物多様性においては「陸域の生物種の約8割に生息・生育の場所を提供」しています(目標15)。「土壌や水の保全、きれいな空気等に貢献」し、「土地の劣化や砂漠化を防ぐ」役割を果たす(目標6)とともに、「洪水、地すべり、雪崩、干ばつ、砂塵嵐、砂嵐」等の自然災害リスクを減少させています。さらに、気候変動対策についても、二酸化炭素の吸収・固定をつうじて貢献しています(目標13)。
※図は本紙参照
<この記事についてアンケートにご協力ください。>