人口10万人当たりの医師数(令和2年12月31日現在)
■地域医療の課題
田口:鹿嶋市の健康課題については心臓疾患(特に急性心筋梗塞)で亡くなられる方の割合が多く、その背景として、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持っている方が多い状況にあります。また「未受診」や「治療の中断」などにより、悪化してから治療が始まる方も少なくありません。
鹿行5市を一つと考えた「鹿行地域医療圏」における人口10万人当たりの医師数は93.6人で、県内の二次医療圏の中で最下位、全国344二次医療圏においても低迷している状況です。鹿嶋市だけを見ると、161.3人で鹿行地域医療圏の中では高い数値となっていますが、国や県が200人を超えていることを踏まえると、まだまだ低く、本市は医師不足の状況にあります。
松倉:新型コロナウイルス感染症が5類に移行してからも、感染が続いていましたが、昨年の秋からは、インフルエンザの流行が非常に多い状況です。特に子どもが罹(かか)って、大人にうつるといった流れが多かったように思います。
コロナ禍以降の生活の変化として、運動習慣の減少や、生活様式の変化やストレスなどにより過食傾向になった…というのはよく報道されています。市の健診結果でも、メタボやメタボ予備軍該当者が増えている状況です。また、市長からもありましたが、自覚症状のない病気などでは、受診がおろそかになり、病気の悪化や、合併症を併発してから受診する方が多いのも事実です。これはコロナ以前からの問題でもあります。
小山:コロナ禍では、救急患者の受け入れ制限をせざるを得ない期間が長く続きました。感染症法の扱いが5類となった今年度からは、従前の救急体制に戻ったため、年間3,500件超の救急搬送受け入れが達成できる見込みです。
また、令和5年度から、鹿嶋市・茨城県・昭和大学が、「茨城県地域循環器救急医学寄付講座」を開設してくれたことにより、昨年4月より当院に昭和大学の循環器内科医2人が新たに配置されました。これにより、日曜日・祝日を問わず、24時間365日の心疾患患者受け入れが可能になりました。以前から取り組んでいた脳神経外科疾患の24時間365日受け入れと併せて、少しでも市民の皆さんの安心につながれば幸いです。
■現在の取り組み
小山:1つ前の話題につながりますが、地域の医療を守るため、当院では救急患者や高度な医療を必要とする患者の受け入れに注力しています。これを達成するためには、地域の診療所との地域医療連携が欠かせないと考え、軽症であれば、先ずはかかりつけ医を受診し、必要な場合は紹介状を持参して、当院を受診していただくことを推奨します。紹介状があれば、予約患者さん同様にスピーディーな受診ができる体制を整えています。
また、当院で治療を概ね完了した患者さんには、地域の診療所に逆紹介する取り組みも、今後さらに強化していきたいです。
松倉:茨城県では、平成28年に茨城県地域医療構想を策定し、令和7年に向けて(1)病床の機能分化・連携(2)在宅医療などの充実(3)医療従事者の確保・養成を進めるために、県内の構想区単位で、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の医療機能ごとに病床の必要量を推計し、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の構築を目指しています。
また、医療が脆弱な当地域においては、外来での診療においても、地域の診療所と中核病院とが、それぞれ役割分担をした上で連携していくことは、医療体制を持続させていくためにも大変重要なことだと考えています。小山理事長からのお話のとおり、地域医療連携の体制をより充実させ、患者さんにも、その仕組みを十分理解して活用いただけるよう、医師会としても取り組んでいきたいです。
田口:本市の医療体制をより充実させるためには、市内医療機関に定着いただける医師を確保することと考え、平成22年度に市独自の「医師確保支援事業」を創設しました。これにより、小山記念病院をはじめとする市内医療機関のご協力もあり、令和4年度までの13年間で常勤41人、非常勤10人の医師が確保され、市内医療施設従事医師数は令和2年までの10年間で22人増加しました。
先ほど小山理事長からもお話がありましたが、令和5年度からは、「茨城県地域循環器救急医学寄付講座」の開設により、小山記念病院に循環器内科医2人が配置されました。さらに、令和5年12月には、将来市内の医療機関で働きたいと考えている看護学生に対し、修学に必要な資金を貸与(一定期間勤務することで免除)することにより、市内病院などに必要な看護師を確保することを目的とした「鹿嶋市看護師修学資金貸与条例」を制定しました。これにより医療現場を支える看護師についても、充実させていきたいと考えています。
救急医療の体制確保としては、休日当番医や鹿嶋市夜間小児救急診療所などにも取り組んでいます。今後も、市内医療機関はもちろん、近隣市や近隣医療機関とも連携し、救急医療体制の充実強化に努めていきます。
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