◆食中毒の話
寺井医院 院長 寺井裕二先生
皆さん、こんにちは。同じ食事で複数の人間に下痢や嘔吐があったときは、食中毒の可能性があります。昔は鮮魚など海産物によるビブリオという細菌による食中毒が夏に多くみられ、夏は「食中毒の季節」でした。最近は食品衛生法による検査や食品の保冷技術の進歩でビブリオの食中毒は激減しています。ただし、肝硬変の人はビブリオで致命的になることがあるため、生魚を食べるのはやめましょう。
食中毒の患者数が最も多いのはノロウイルスで、11月から2月にかけて多くみられます。ノロウイルスは耳にしたことがある人は多いでしょう。カキなど二枚貝の生での食事に注意が必要です。現在では生食用のカキは沖で養殖し、さらに清潔な水で数日育ててカキの腸をきれいにしてから出荷されます。ですので、かなり安全だと思いますが、食品から直接検査するのが難しいため、100%安全とは言えません。少なくとも体調の悪いときに、カキを生で食べるのはやめましょう。ちなみに、密漁でとれたカキでサルモネラや赤痢といった細菌に感染した例が報告されています。怖いですね。
ノロウイルスの次に発生患者が多いのは、カンピロバクターという細菌です。これは加熱が不十分な鶏肉からの感染が多いです。流通・販売の関係者には申し訳ないですが、鶏の刺身を食べるのはやめましょう。また、焼き鳥屋さんや居酒屋さんで鶏肉の加熱が不十分なときは、面倒くさがらずに「火の通っとらん」と伝えて作り直してもらいましょう。または食べずにおきましょう。
食中毒ではありませんが、家庭では一人だけ発症という例も多く経験します。期限切れのものを食べたり、手洗いが不十分だったりして、病原性大腸菌や黄色ブドウ球菌による下痢や嘔吐で来院される人も時々経験します。調理する人は、体調の悪いときは仕事を休んでください。厨房で吐いたら、汚染された食材は捨ててください。皆さん、もう一度、手洗いと食品衛生を見直しましょう。
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