■対馬全島に残る元寇の痕跡と記憶
元寇は、宗資国ら鎌倉武士が多く戦った佐須浦だけでなく、対馬各地にその爪痕を残しています。また、その時にあったとされるできごとが伝えられています。皆さんが住む地域にも遺構や伝承が残されているかもしれません。
▽上県町伊奈
1269年、元の使節が来島。国書の取次ぎを求めるが拒否されたためか、2人の島民「弥二郎と籐次郎」を拉致し元の都へ連れていき、数か月後に連れ帰した。
▽三根郡司 宗 甲斐六郎の墓
三根浦に侵入した元軍と戦って戦死したとされる人物。
▽与良郡司 越前五郎の墓
元軍を加志浦で迎え撃ち、戦死したとされる人物。
▽佐護郡司 下野次郎の墓
文永の役の帰路、西泊に上陸した元軍と戦ったとされる人物。
▽峰町佐賀
2度目の元寇「弘安の役」で元軍が上陸したとされる場所
▽厳原町 対馬高校
高校に伝わる蒙古兵のものとされる兜。旧校舎時代からあることは判っているが、そのほかの詳細は不明
※詳細は本紙PDF版6ページをご覧ください。
■伝承を演劇や太鼓で表現
元寇の歴史を演劇や太鼓など形を変えて残しているものもあります。対馬市民劇団では、一人の女の子が風や潮の流れを巧みに読み、沖合に停泊していた元軍の船を攻撃した美津島町尾崎地区に伝わる物語を演劇として、2011年に上演しました。また、佐須地区の住民や陸上自衛隊の隊員が、元寇の惨状や武士の奮闘をイメージした曲を太鼓で演奏しています。なお、市民劇団では、今年12月に新たな脚本による再上演を予定しています。
■漫画やアニメ、ゲームで元寇を感じる
2013年には、文永の役の対馬での戦いをテーマにした『アンゴルモア元寇合戦記』が連載をスタート、少ないながら記録が残る史実を軸に、個性的なキャラクターが対馬を舞台に活躍し、対馬での元寇の歴史を新たな角度から描いた作品は、その後アニメ化するなど大きな広がりを見せました。また、2019年には、対馬での戦いをモチーフにしたTVゲーム『Ghost of Tsushima』が発表、全世界でプレイされ、その舞台となった対馬を訪れる観光客も増えました。
■次の50年につなげる
元寇から750年を機に、元寇の歴史と地域の思いを、次の世代につないでいこうという取り組みが進められています。
▽地域の一大プロジェクトだった元寇700年祭
50年前の昭和49年、小茂田浜神社の周辺で盛大なイベントが行われました。元寇から700年を記念した祭りには、毎年行われている例大祭だけでなく、自衛隊のヘリ遊覧や対馬出身の芸能人によるステージイベント、さらには福岡で行われる博多祇園山笠が展示されるなど、地域を挙げてイベントを盛り上げました。750年の節目を迎えた今年、50年前の賑やかなお祭りを体験した人たちが中心となって、今の子どもたちがワクワクするような祭りにしたいと知恵を出し合っています。
◆子どもたちの記憶に残る祭りをすることで、50年後にも祭りをしたいと思ってもらいたい
今回、地区の区長をしている縁もあり、元寇750年祭の実行委員長を引き受けることになりましたが、実は50年前の祭りの実行委員長は私の父が務めていました。父や役員の人たちが、対馬全島を廻って寄付のお願いをする姿などを見て、この祭りに掛ける意気込みが凄いものなんだと感じたことを憶えています。
小茂田地区に住む人間として、小茂田浜神社は、私たちを守ってくれる特別な存在です。今回750年祭を迎え、慰霊や顕彰という祭事としての祭りと、地域を盛り上げるイベントとしての祭りという両輪で臨んでいきたいという思いがあります。集まった実行委員の中には、子どもの頃に700年祭があり、その楽しかった経験を今の子どもたちにも経験させてあげたいと、協力してくれる人たちもいます。50年前は神社に関係する地区の住民で実施することができたイベントも、人口減少で実現が難しく、そういった声に非常に助けられています。
今回の元寇750年祭では、元寇について対馬だけでは感じることができない体験をしてもらおうと、地区の子どもたちと一緒に遺構が残る九州本島へ行く研修会も行いました。博多湾の防塁や松浦市にある史跡などを巡って、元寇について何かを感じ取ってもらえたらうれしく思います。11月に行う祭りに来てくれた子どもたちが、50年後の800年祭を盛り上げてくれることを願いながら、準備を進めていこうと思っています。
■アンゴルモア 元寇合戦記 特別展開催
開催期間:10月12日~11月24日
詳しくは対馬博物館へお問い合わせください。
11月9日(前夜祭)・10日(本祭)
ところ:小茂田浜神社周辺特設会場
主催:元寇750年祭実行委員会
後援:対馬市
※クラウドファンディングを実施中!!
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