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長崎県立大学 シーボルト校研究紹介 Vol.40

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長崎県長与町

長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。

◆変貌する中国農村社会
国際社会学部 国際社会学科
祁建民 教授

祁研究室では、長年、中国農村での現地調査を行いながら、中国研究機関が所蔵する村落文書を新たに発掘し、学際的な取り組みを行ってきました。農村社会から中国における国家権力と社会構造との関係を分析してきました。今回はその中から、中国農村の変貌について少しご紹介します。
1978年に始まった経済改革は、中国経済の持続的な高度成長をもたらし、2022年末までに、中国の一人当たりGDPが12,000ドルになりました。しかし、現在、中国農村に関しては、いくつかの問題が注目されています。第一に、貧富格差の拡大問題です。1980年代、特に90年代後半から、沿海都市部がめざましい経済発展を遂げる一方で、内陸・農村部の停滞が深刻化しています。第二には、「三農(農民・農村・農業)問題」です。ある村の共産党書記長は中央指導部への手紙の中で、このように述べています。「農民は実に苦しく、農村は実に貧しく、農業は実に危うい」。第三には、二元社会の問題です。中国における都市部と農村部の戸籍制度・社会保障・教育制度・医療制度が異なるため、二元社会と呼ばれています。
21世紀以来、中国政府は「都市化促進」政策を打ちだし、農村人口の移動が加速してきました。調査によれば、現役の出稼ぎ者及び経験者は全体の38.2%、性別では、男性の現役出稼ぎ者の割合が女性より9ポイント高く、未婚者の割合も既婚者より26ポイント高くなっています。
中国農村における土地制度では、「所有権」を集体(村レベルの行政単位)がもち、集体から耕作を請負う権利として各農家に「請負権」が分配されます。請負権をもつ農家が土地を第三者に貸し出す場合は、請負地の「経営権(使用権)」を移転させることができ、現在、大量の青壮年が都市に出稼ぎをして、耕作放棄者が続出しています。
農村問題は、現代中国にとって単なる経済問題ではなく、中国の政局の安定と関わっており、農民は中国共産党支配の土台となっています。中国の農村問題には、世界中から大きな関心が寄せられています。

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