■もっと知りたい トイレのこと
私たちにとって、トイレほど身近で大切な存在はあるまい。そんなトイレの歴史をもっと知りたいと思う。しかし、よくわからないのだ。中野市域に人類が住み着いて3万年。遺跡はたくさんあるのに、この閉塞感。スッキリしたいものである。
匂う遺跡がある。小舘の高梨氏館跡である。館の主人、家族、使用人、それなりの人数が土塁と堀で囲った空間に集住していたのだ。ときには高貴な来客もあったろう。トイレがなかったはずはない。しかも、館跡のほぼ全域が発掘されている。発掘報告書はトイレ遺構(いこう)のことには触れていないが、有名な一乗谷朝倉氏(いちじょうだにあさくらし)遺跡(福井市)の事例を念頭に探してみよう。
クサい遺構を見つけた。底に腐食性の黒土が堆積した石積方形竪穴(いしづみほうけいたてあな)である。一乗谷のトイレ遺構と似ている。ただ、一乗谷では、金隠しが出土したり、黒土から寄生虫卵や食用植物の種子が検出されたり(ゆえに人糞と解釈)、多くの資料をくみ取ってのトイレ認定である。黒土だけでは心もとない。とは言え、トイレの可能性はあると思う。
しかし、遺構の立地を見てがくぜんとした。館のど真ん中なのだ。館の西側にあった門から入り、主殿に向かって進んでいく。すると、主殿にたどり着く前に、トイレに出くわす配置になってしまう。そんなことがあり得るのか。
結局スッキリしない。手を洗って出直しだ。
柳生俊樹 生涯学習課学芸員
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