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想いを石に刻む~高遠石工の歩いた道~

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長野県伊那市

■Vol.33「市内の貞治仏探訪(9)」
守屋貞治(もりやさだじ)の『石仏菩薩細工(せきぶつぼさつさいく)』(細工帳)の記載順に市内の貞治仏を紹介していますが、今回は円通寺というお寺にある貞治仏2体を紹介します。
円通寺は伊那市長谷市野瀬集落の西側上段にある臨済宗妙心寺派の寺院で、室町時代の1510年に市野瀬勘兵衛という豪族によって開かれたと伝わります。この寺の参道の階段を上ると、向かい合うようにして貞治仏が安置されています。右手は聖観世音菩薩、左手は延命地蔵大菩薩です。『石仏菩薩細工』に「一、聖観世音菩薩一之瀬村円通寺一、延命地蔵大菩薩同寺」と記されており、円通寺住職の依頼で制作したことが分かります。聖観世音菩薩の台座には円通寺第8世住職「瑞梁」の名が刻まれています。瑞梁が亡くなった(入寂した)1815年以前のものと考えられます。
聖観世音菩薩は左手で閉じた蓮の花を持ち、右手で施無畏印(恐れなくてよいことを示す)のポーズをとっています。そして、垂れた天衣は足元で反り上がっています。これらは前回見た聖観世音菩薩と同じパターンです。頭の阿弥陀如来と舟形光背の線彫りの蓮を組み合わせたデザインにしている点はこの観音さまの特徴です。線彫りの文様がある貞治仏は大変希少です。
延命地蔵大菩薩は日輪光背(にちりんこうはい)を持ち、右手に錫杖、左手に宝珠を持っています。蓮華座の下には少数の石工しか手がけていない伏せた蓮の葉があります。その下の円柱には「仏の世界にいながらも人間界に近い存在である忉利天が仏の教えを説き、苦しみを取り除き楽しみを与えていることから、仏の誓願はこの上なく大きい」という内容の詩が刻まれています。
円通寺の2体の貞治仏に込められた瑞梁和尚の願いは大きく、貞治仏の存在の大きさを感じることができます。

問合せ:高遠町歴史博物館

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